Cherry-pick【名探偵コナンR18短編集】
第27章 一家勢揃!秘境の温泉宿【赤井秀一】
真純ちゃんは分かりやすいくらい難しそうな顔してて、手札は芳しくなさそう。
秀吉さんは涼しい顔。まあ、ポーカーフェイスに関しては彼はお手の物だろう、全く読めない。なんせ彼は将棋のトッププロなんだから……
単なる家族の遊びだけど、やるからには秀一さんに勝ってほしいところ。秀一さんと肩を並べて、手札をじーっと見つめる。
秀一「コレか、コレ……どちらか選べ」
「うーん……どっちでもいいの?」
秀一「ああ。これは運の問題だからな」
「じゃあ……こっち?」
三人(とわたし)で睨み合うようなやり取りがしばらく続き……
最後に全員が手札をオープンにした瞬間、秀一さんがニヤリとし、真純ちゃんと秀吉さんが落胆したのが見えて、秀一さんの勝ちを確信した。
「やった!秀一さんの勝ちですね!」
真純「よーし!もう一回いくぞー!」
秀一「いや。俺が勝ったんだから、まずは俺の言うことを聞いてくれるんだろう?」
秀吉「……で?何を聞けばいいの?」
秀一「今日はもう片付けて、寝ろ」
真純「えーっ!まだ寝れないよー!」
秀吉「そういうことね……」
秀一「寝れないならとりあえず静かにしてくれ、俺は疲れてるんだ」
ブーブー言う真純ちゃんを横目に秀一さんはトランプを集めてケースに戻していく。
最初からそれが狙いだったんだろうか。
そして冷蔵庫から小さな日本酒の瓶を取り出して言う。
秀一「煩い親も帰ったことだし……、付き合え」
「あっ……はい!」
真純「じゃボクはオレンジジュース!」
秀吉「僕はコーラかな!」
秀一「……」
「あはは……」
結局、窓際のスペース、広縁にわたしと秀一さんは移動し、襖をぴっちりと閉めて二人で飲むこととなった。
小さな瓶からお酌をし合って、チビチビお酒とライトアップされた坪庭を楽しむ。
「せっかく久しぶりにと会えたというのに……アイツらは邪魔ばかりだ……」
「そりゃあ真純ちゃん達だって久しぶりに秀一さんに会えたんですから。喋りたいに決まってますよー。それにアメリカに戻ったら滅多に会えなくなるんだし……」
「それも分かってはいるんだが……しかし」
なんか……不貞腐れたような態度の秀一さんが可愛く見える。
わたしは、“嬉しい”と“呆れる”の両方が混じって顔が変なことになってそうだ。