Cherry-pick【名探偵コナンR18短編集】
第27章 一家勢揃!秘境の温泉宿【赤井秀一】
もう外は暗くて周りの景色は臨めないけど、所々ライトアップされた木々は季節感たっぷりだし、なんと言っても星空が見える。
先客はそこそこな大きさの岩風呂に一人だけ。後ろ姿、肩甲骨辺りから上しか見えないけど、あの頭の形、肩幅と背中の感じは間違いなく秀一さんだ。
滑って転ばないように、でもなるべく早くちょこちょこ歩いて、その後ろ姿に近付く。
あと数歩で秀一さんの真後ろって所で、濡れた黒髪の頭がこちらに振り向いた。やっぱり秀一さんだ。
「遅い……」
「秀一さんが早すぎるんですー……」
「……なんだその服は」
「置いてあったんです!露天用にって」
足元にお湯を掛けて、片脚ずつ浴槽の中へ入る……腰まで浸かった所で秀一さんに捕まえられた。
後ろから回された腕の中にすっぽり収められる。これがいつもだったら落ち着く格好、だけど今はいつ誰が入ってくるか分からない状況だ……落ち着いてなんかいられない。
「どうなってるんだコレは……」
「ちょっと!」
湯浴み着の上を秀一さんの手が這い回る。マズい予感しかしないわたしは彼から離れようと試みるけど、腕力の差がありすぎるこの人には敵う筈もなく……
「こんなもの脱げ。今なら誰もおらん」
「誰か入ってきたらどうするんですか!」
「俺がここに居れば見えんだろう」
「あっ!……だから!ダメです!」
裾を捲り上げようとしてくる秀一さんの手を必死に押さえる。
「久しぶりに愛しい女に会えたんだ……直に触れたいと思うのは俺だけか?」
「……っ……!そんな言い方は……ズルいです……」
首元に顔を埋められて、耳のすぐ近くでそんな事言われたら……こっちまで理性が崩壊しそうになる……!
たしかにこんな風に秀一さんと密着するのは数日ぶり。身体の奥が疼きかけてきたのは否定できない。
けど……!
「……」
「ゃ……だ、め……秀一、さん……」
首すじに唇を付けられて、脚の間に手が滑り込んでくる。ダメなのに、身体が震えて、力が入らない……