Cherry-pick【名探偵コナンR18短編集】
第26章 夏の誘惑*後編【降谷零】
炭と煙の匂いに混じって、微かに零の匂いがする大きなTシャツ……さっき壁際で迫られたことを思い出せば、私まで変な気を起こしそうになるけど……
それは振り払って海へ入る。砂浜の上は信じ難い暑さだったけど、海水の中は気持ちがいい。
零と息子ちゃんは巨大な水鉄砲で水を掛け合い遊んでて楽しそう。あんなに大声ではしゃぐ彼を見るのは初めてだ。
それにしても陽射しの下に映えるいい身体。無駄がひとつもない引き締まった上半身。見るのは3度目……のはずだけど、何度見たって見飽きる事なんて無さそう……
オモチャの水鉄砲も、零が持てばなんだかスゴイやつに見えてくる。
彼ら(ほとんど零)の様子を眺めつつ、私は近くで大きな浮き輪で一人プカプカ。
その内息子ちゃんは水鉄砲に飽きたのか、私の方へ泳いで向かってくる。5歳児にして中々の泳力。
そしてなんと海中に潜ると、私のいる浮き輪の輪の中に入り込んできた!
プハっ!と顔を出してこちらを見上げてくる。
「すごいねー!泳げるんだ!」
「うん!ボクねーちゃんとも遊びたい!」
キュッと抱きついてきた息子ちゃんが可愛すぎて、私もその小さな体を抱きしめる。
「ほわー!ねーちゃんおっぱいやわらかー!おおきい!」
ちょうど胸に息子ちゃんの頭が埋まるけど……まあ子供だしいいだろう。
「おいっ!何してる!」
「ちょっと零……子供なんだから」
「コイツは子供でも男だ。ほら、から離れろ」
だけど血相を変えて向かってきた零が、息子ちゃんの体をひょいっと持ち上げ、海に放り投げる。
「うわーっ!」と大声の後、バシャン!と水飛沫を上げて着水。
しばらくして海面から顔を出した息子ちゃんは、「もう1かい!」と零におねだりをしてる。
「二度とに触らないなら投げてやる」
「えーなんでー」
「は僕の恋人だからだ」
「ちぇー……わかったよ、だからもう1かい!」
「よし。いい子だ。も、もう触らせるなよ?」
「はいはい……」
どっちが子供なんだか。こんな小さな男の子にヤキモチ(?)焼くなんて……嬉しくなくもないんだけど、ちょっと気にしすぎだ。
でもそういう私だって……実は私も零に投げられたい……なんて子供っぽい事を考えてたりする。