Cherry-pick【名探偵コナンR18短編集】
第26章 夏の誘惑*後編【降谷零】
大口の取引先である□□社の目暮部長。よく零が会いに行ってるのは勿論承知してるし、事務的なやり取りならこれまで私も何度もした。
でもまさかその部長の別荘に泊まりに行くだなんて考えもしなかった……ほんと、そこまでしちゃう彼は生粋の仕事人間だ。(そんな彼を私は物凄く尊敬してるんだけども)
今日は連休2日目の朝、晴天。別荘にお邪魔することになった当日……
私の家まで車で迎えに来てくれた彼を見て、まず驚いた。
「おはよう。」
「おはよう……零、それ……自分の車?」
「そうだけど?」
「……すごいの乗ってるんだね」
彼が乗って現れたのは、真っ白なツードアのスポーツカー。屋根は開かなさそうなタイプ。ちょっと意外だった。
窓越しに喋りながら、ピカピカと光を反射している車体を眺める。
「一目惚れだったんだ。若い時のね」
「へえ……なんか零ってもっと効率的なのが好きだと思ってた」
「たしかに。この車、燃費は悪い上に人も荷物もあんまり乗せられないしな……でもカッコイイだろ?」
「零が運転してれば社用車でもカッコイイです……って、ごめんなさい、私あんまり車に詳しくなくって」
「いいよ、女の子だしな。とりあえず乗って」
そして車に乗り込み、更に驚く。
「!……今日は……すっごいラフなんですね……」
「……服?……おかしいか?」
「全然!ただいつもと雰囲気違い過ぎて……」
「今日は海だからな……のそういう服も初めて見るけど……すごく可愛い。似合ってる」
たしかに私も今日は会社にはまず着ていかない服、大きな花柄のワンピース……だけど今は私の事なんてどうでもいい。
運転席に座る零は、ゆったりした白いTシャツに、濃い色のハーフパンツで。
体型に合った細身のスーツにシャツにネクタイ、洗練された格好の彼しか知らなかった私には新鮮すぎる。
ていうか……なんか、可愛い……!
でも男の人に“カワイイ”は言っちゃダメなような気がして、その言葉が口から出掛かるも飲み込んだ。
「なんだよ、ジロジロ見て……ほら、シートベルトして」
「あ。はーい……」
目的地までは数時間のドライブとなる。
車のシフトレバーを操作する彼の左腕になんだか無性にドキドキしつつ……それに気付かれないよう表情を引き締めた。