Cherry-pick【名探偵コナンR18短編集】
第26章 夏の誘惑*後編【降谷零】
あの日と行った和食屋。その店を推していたのが、とある大口の取引先の役員。
僕は今まさにその人物、目暮部長と会っている。業務的なやり取りはほぼ終わり、雑談中だ。
目暮部長とは、もう結構長い付き合いになるけど……毎年この夏の時期になると、ある同じ誘いを受ける。
これまでは、申し訳ないけど毎度辞退させてもらっていた……でも今年はどうだろうか。また同じ誘いがあれば、今年は断らないつもりでいる。
「この前、目暮部長に教えて頂いたお店行ってみたんです。あそこの、あの……」
「おっ!良かっただろ!」
「はい。雰囲気も良かったですし、あのあれが特に美味しくて。女性を連れて行ったんですがその子もすごく喜んでくれて。いいお店でした。ありがとうこざいました」
「それはよかった!そうだ!降谷くん、今年こそどうかね!盆休みにウチの家族と浜辺でゆっくり……」
「それなんですが……いつもは僕が行っても家族団欒のお邪魔になると思って遠慮してたんですよね……でも今年は……良ければ、実は一緒に連れて行きたい、目暮さんや奥さんにも紹介したい女性がおりまして」
「本当かね!来てくれるのか!」
「ええ」
「それはいい!妻も息子も喜ぶよ!じゃあ早速だがいつなら来れるかい……」
目暮家は、毎年夏の長期休暇を、海辺の別荘で過ごしているのだ。そこに毎年誘われるのだけど、今までは一緒に行ってくれる相手がサッパリ思い当たらなくて、断ってばかりで。
でも、ならきっと来てくれるだろう。
目暮部長も喜び、僕はと海で遊べて。まあ……には気を遣わせてしまうだろうけど、彼女ならソツなくこなせそうだし、むしろ張り切ってくれそうな気しかしない。
「一度彼女と相談して連絡しますね」
「よし!いやー、今年は楽しみだな!」
目暮部長と別れ、会社用のスマホでに電話を入れる。頼みたい業務内容を伝えれば、“承知しました”と気持ちの良い返事。
要件のみで通話は終了。
……きっと今頃マジメな顔して書類を作ってくれてることだろう。
あと一件回って今日は終了の予定。
スムーズに終わらせて、早くの顔が見たい。今日は金曜。今夜は彼女とデートだ。