Cherry-pick【名探偵コナンR18短編集】
第26章 夏の誘惑*後編【降谷零】
社会人になってからもう何年だ……?
今まで、女性に言い寄られて断っても断り切れず仕方なく男女の関係になった事は何度かあった。
だけど、最初は熱烈に僕を好きだと言ってた割に、彼女達はすぐに僕から離れていって、全く長続きしないことばかり。
“零くんは仕事ばっかり”
“仕事と私とどっちが大事なの”
“仕事中でもメールくらい返せるでしょ”
何度も言われた同じような文句。
仕事中はもちろん仕事を最優先したいし、休みの時だって仕事に活かせることがあるなら何でもやっておきたい。
このスタンスを変えるつもりはないから……僕は女性とお付き合いするには向いてないんだろう。
交際はおろか、この先結婚するなんて事は有り得ないんだろうな、と思っていた。
最近までは。
昨年、先任の僕の担当事務員が退職して、代わりに担当になったさん。
容姿が可愛いのはさておき、真面目だし、僕が頼むであろう事を先読みして全て準備してくれてる、っていう文句無しの素晴らしい事務員。
親睦を深める為に何度か食事にも行ったけど、彼女の話すことは仕事のことばかり。僕程では無いにしろ、彼女も中々の仕事中毒者だと思われた。女性のこういうタイプって珍しい。
こういう子となら、長続きするんじゃないかって……密かに思っていた……だけど公私混同は良くないような気もして、迷ってもいた。
先月の最終日、たまたま僕の誕生日。別にその日に特別な意味はないけど、彼女を食事に誘った。
彼女はいつも通りついて来てくれて、いつも通り仕事の話で盛り上がり……
だけどいつの間にか仕事と関係無い話を沢山している内に、情けないことに抑えが効かなくなり。きちんとした段階も踏まずに自分から誘って、彼女を抱いてしまった。(少し頬を赤くして可愛く喋る様子と、すぐ隣にある剥き出しの白い腕が……もう堪らなかったのだ)
まあ、結果僕達は“恋人同士”となった。
仕事中はもちろん今まで通り、仕事を終えても僕達の会話の中身は半分が仕事の話。だけど、僕としては願ったり叶ったり。
本当にの事は大切にしたいし……いずれは結婚も……
いやでも……いつかに子供が出来て、退社されたら一番困るのは僕だな……
……そんな、今まで考えたことも無かったことが次々浮かんでくるようになった。