Cherry-pick【名探偵コナンR18短編集】
第21章 緋色の煩悩【赤井秀一】
「おい……お前が泣くことじゃない」
「だって……辛すぎる」
「辛いのは俺だけで十分だ」
「秀一さん……」
の肩を抱き寄せて、震えている小さな背中を撫でる。
風呂上がりの髪から香ってくるのは、嗅ぎ慣れたいつもの匂い。
安心すると共にまたフツフツと疑念が湧き上がってきそうになるが……まあ……明確な証拠も無ければ……言い合いをして事を荒立てたい訳でもない。
言った所でまた「秀一さんヤキモチー?」なんて返ってきそうな気もする。認めたくもないがそうだ、その通りなのだ。
が俺の事を好いてくれているのは、日々身を持って感じている。
一旦この事は、心の奥底にしまっておくことにした。
それからしばらくしては泣きやんだが、どうにも湿っぽい雰囲気は拭えず。酒も進まない。
「……今日はもう寝るか」
「一緒に寝てもいい?」
「勿論」
電気を消してベットに入れば、がすり寄ってくる。頭を撫でて、キスをして……
また背中を抱いてやれば、彼女の身体から力は抜けていき、ほぼ動かなくなる。
そしておそらく、は寝た。
……実の所、「一緒に寝てもいい?」の時点からムラっとしかけていたんだが。スースーと寝息が聞こえてきて、気も変わった。
の髪を撫でている内に俺にも眠気がやってきて、目を閉じた。
そう言えば最後に寝たのは昨日の昼過ぎだったか。