Cherry-pick【名探偵コナンR18短編集】
第21章 緋色の煩悩【赤井秀一】
夕方、仕事を終えたが帰ってきて、やっとまともに顔を合わせて話す事ができた。
今日は昼過ぎから夕食を作り始めたんだが、時間の掛かる手の込んだメニューにして正解だった。はそれこそ美味そうに食ってくれたし、フニャフニャと笑うコイツを見ていると心が穏やかになる。
このが俺を裏切るようなことをしているとは、とても考えられないんだが。
俺に降谷くんの事を何も言ってこないのは……言ったら俺が気を悪くするだろうとか、気を遣っている、という感じだろうか。
たしかに俺だって、“昨日は一晩中ジョディと二人で張り込みをしていた”と、わざわざに伝えようとは思わない。伝えた所ではいい気もしないだろうから、言わぬが吉、という事もある。
やはり昨夜のことを聞くのは辞めにしよう、と思ったんだが。
風呂を済ませ、俺の部屋で二人で晩酌を始めた所、結局組織の話になり、流れで降谷くんの名前が出てしまった。
ただ、から聞く、彼の話は……何かを繕っているようには見えなかった。
そして話題は、降谷くんが俺を毛嫌いしている一番の理由、スコッチの件になる。
によれば、降谷くんは彼が自決したことを分かっているようだった。
しかし何故彼を見殺しにしたのか、と未だに俺をかなり恨んでいるそう……それは在り在りと伝わった。
そして驚いたことに、スコッチは降谷くんの幼馴染で親友だったんだと。スコッチは、降谷くんにとって同僚というだけではなく、とても大切な仲間の一人だったのだ。
降谷くんのあれ程までの怒りは、その所為もあったのだと……今になって納得できた。
できたと同時に……胸が苦しくなる。
俺だって彼を救いたかった。救える所だった。だが、それは叶わなかった。
に彼の死の真相を話すと、彼女の目にはあっという間に涙が溜まり出した。
しまった、泣かせてしまう、と思った時には、涙が頬へと流れていく所だった。