Cherry-pick【名探偵コナンR18短編集】
第20章 飛び越えた先に【松田陣平】
「あ、そうだ。米花町にいい感じのお店できたんだってー!今度行こうって、ハギが」
ベッドを背にして並んで床に座り、呑気な口調では喋り出す。やっぱコイツは俺の事を男としては見てねーんだろう。
「ふーん、二人で行って来いよ」
「っえ!行こーよ」
「別に俺がいてもいなくても変わんねーだろ」
「……絶対ハギは寂しがる」
「そうかよ……しゃーねーな……ったく……」
ハギ、ハギ、とコイツの口から出てくんのはハギのことばかり。
「ほんとは行きたいクセにー!素直じゃないんだから陣平は」
「そりゃ悪かったな」
「……なんか今日機嫌悪いね」
「誰のせいだと思ってんだ」
「えっ……もしかして私のせい……嘘?何かした!?」
素っ頓狂な声を上げるに、だんだんイラついてくる……俺はたしかに素直じゃねーのかも。イライラしてんのの本当の理由は、じゃない。
「ああ、したな。それにさっきからハギハギうるせぇ。そんなにアイツが好きか?」
「……好きだけど。陣平だって好きでしょ?一緒じゃん」
「じゃー聞くけどな、なんで今日ハギとお前がセックスしてた」
あー……イライラついでに勢いで言っちまった。一瞬にしての顔が曇っていく。
「……バレてたか」
「いつからだ?全っ然気付かなかった」
「いつからも何も……今日のあれが最初で最後……」
「何だそれ……酔った勢いでヤっちまったのか」
「あー……酔ってなかったら無理だったかもね、ただちょっと普通と違うと言うか……」
はハギに悩みを相談してたんだと。“誰とシてもセックスが全く気持ち良くない”と。その流れで何故かそうなったと。
……ハギのリミッターが外れちまったのか、好奇心からだったのかは知らねぇが……
「ハギにとってはゲームみたいなもんだったのかもね、感じない身体を攻略してみるっていう」
「ゲームねぇ……じゃーハギは見事クリアっつーことだな、すげーヨガってたじゃん、メチャクチャ悦さそーに見えた」
の頬が赤く染まっていく。ハギとのアレやコレを思い出してんだろーか。こりゃ完全に女の顔だ……