Cherry-pick【名探偵コナンR18短編集】
第20章 飛び越えた先に【松田陣平】
日付も変わって結構経ち……最初に潰れたのはハギだった。まあもかなり酔ってる。
俺は……こんな状況で酔える筈がない。
「、帰るか?ハギ寝ちまったし」
「うーん……だね」
誰かが潰れたら飲みは終了、これもいつも通りの流れなんだが、内心ホッとした。もし“残る”なんて言われたら……益々モヤモヤしちまう。
「今日は送ってやる。お前フラッフラだし」
「あれー?どしたの?優しいね」
「悪かったな、ハギと違っていつも優しくなくて」
「別に……そうは言ってないじゃん……」
と家を出る。ちなみにん家も、俺ん家も、方向は違うが徒歩圏内。
とりあえず、歩くが……コイツの歩くのの遅いこと……たまにフラついてすがり付いてくんだし……その度に腕に胸を押し付けられて、否が応でも一度見たあの光景が脳内で再生される。
あー……勘弁してくれ。
長い時間を掛けてやっとコイツの家の前まで来た。
だが、の様子がおかしい。
「?どーかしたか?」
「……やばい。吐くかも」
「マジかよ……部屋までもつか?」
「んー……」
“吐きそう”な女を放って帰る程、俺も冷たくはない。部屋に一緒に上がり、をトイレにブチ込み、台所で水を適当なカップに入れ、音のしないトイレの前でしばらく待つ。
「……おい、どーだ……?水持ってきたぞ」
「ありがと、欲しい」
扉を開けて水を渡せば、は一気にゴクゴクと飲み干す。
「あーっ……生き返った。なんか、吐くかと思ったのに全然吐けなくてさー……でももう大丈夫かも?ありがとね」
「……まあ、もう少し居てやるから。楽にしてろ」
「うん。じゃ、なんか飲む?ビール?」
「おい、俺を長居させる気か」
「だってもう少し居るって言ったじゃんー……」
「へいへい……じゃ、頂くわ」
酔った女の家に二人きり。これってマズイんじゃねーか。
決して広くはないの部屋は、よくある一人暮らしのワンルーム、必然的に飲む場所も、ベッドも、同じ部屋。
全く……昨日までなら何とも思わなかっただろーに。