Cherry-pick【名探偵コナンR18短編集】
第2章 お巡りさんの恋愛事情【松田陣平】
松田に手を引かれるまま、自宅マンションのエントランスに到着した。
自分の家なのに連れ込まれるっていう、おかしい状況。
オートロックの自動ドアを開けようと、カギを取り出して鍵穴に差し込もうとしたとき、手が震えそうになっていることに気付く。
私、緊張してるのか。
エレベーターに乗って、階数のボタンを押し、扉が閉まりかけると、すぐに横から抱き締められた。
身動きも取れず直立したまま固まる。
タバコと香水と・・・それから、明らかに自分と違う匂いがする。
嫌な香りじゃない。むしろ、好きかもしれない。
よしよし、といった感じで頭を撫でられて身体が離れて。
そしてとうとう部屋の前まで来てしまった。
「カギ・・・開けられねーのか?」
「違う・・・」
「なら早く。じゃねーとココで犯すぞ」
「嫌!やだ!」
声を抑えて肩を揺らして笑われながら、ガチャリと鍵を回す。
鍵を引き抜くと、これまた私の部屋なのに、松田がドアを開けて先に中に入り、私は後から部屋へ引き入れられた。
玄関のドアを背にして、ドアと松田に挟まれる。
ものすごく近くに立たれて、顔を見れずに俯いていると、声が降ってくる。
「おとなしいのなー。お前ほんとにか?顔上げてみ?」
「・・・」
ずっと俯いたままでいると、顎に手が添えられ上を向かされる。
意地悪そうに笑う松田の顔が・・・近付いてきて・・・目を閉じた。
唇が触れて、離れて、また重なる。
どうしよう・・・キス、してる。
脳内が真っ白に侵食されていく。ボーッとして、何も考えられない。
膝が崩れて、ズルズルと、ドアに背中を押し付けながらその場にしゃがみ込んだ。
「腰抜けるほど良かった?唇まで処女に戻ってるのか?」
「うるさい・・・」
ニヤニヤ笑いながら顔を覗き込まれる。
キスだってセックスだって、それなりに経験はある。
でも、こんな全身の力が抜けてしまうようなキスは、多分初めてだ・・・
「ほら、立てるか?」
「立てるってば・・・」
「意地張るなよ。優しくしてやるから。ちゃん」
「え・・・」
もう何年かの付き合いになるけど、初めて下の名前で呼ばれて。
なんだか無性に恥ずかしくなってくる。