Cherry-pick【名探偵コナンR18短編集】
第18章 朧月を見上げて【白馬探】
食事の会計は白馬くんがいつの間にか済ませてたみたいで、「私も出す」とは言ったけど、あっさり断られた。内心ホッとしたのは嘘じゃない。お会計が半々だったら、財布の中がスッカラカンになる所だった。
レストランから出ると、店の前に一台、車が停車していて……傍らに、こちらに向かって一礼するおばあさん。
「ばあや、僕の家まで頼むよ。この子も一緒だ」
「承知しました。どうぞ……ぼっちゃん、お嬢さん」
「ありがとう。でも、人前でぼっちゃんは止してくれよ。もう僕もいい歳なんだから」
「そう言われましても、ばあやにとっては、いつまでもぼっちゃんは、ぼっちゃんでございます」
“ぼっちゃん”って。ほんとに白馬くんはお金持ちのおぼっちゃんなんだろう。送迎の車が来る時点でそうだ。
車に乗せられ着いた白馬くんのお家も……もうある程度予想はしてたけど、かなり立派なマンション……今日はこの先何が出てきても驚かないかもしれない。
部屋に入れば、玄関の広さで普通の家とは別格なんだと分かる。
「広そーう……」
「そうか?まあ、一人で住むには広いかもしれないな。ワトソンが自由に飛べるスペースが欲しかったから」
「えっ、ここに一人で住んでるの!?」
「ああ。日本には実家もあるんだけど、SPは常駐してるし四六時中監視されてるようでね……落ち着かないから僕はここに部屋を借りてる」
「ああ……お父さん警視総監だもんね……」
「そう。良いんだか悪いんだか分からないよな……」