Cherry-pick【名探偵コナンR18短編集】
第18章 朧月を見上げて【白馬探】
男性経験が全く無い訳じゃないけど、経験豊富でもない私にとっては、ほっぺにキスをされただけでも大問題。
白馬くんはどういうつもりだったのか。もしやイギリスではキスも挨拶のようなものだったりするのか。
しかも食事に誘おうとしてくれてたなんて……!それって、私は嫌われてはいない、と思ってもいいのか……
気になって気になって中々寝付けなくて、結局眠れたのはだいぶ遅くなってから。
起きた時にはもう昼頃だった。今日ほど他に何も予定が入ってなくて良かったと思えた日は無いかもしれない。
時間をかけて丁寧に支度をして。懲りずにこの前とは違うスカートを履く。やっぱり、男の人と出掛けるんなら女の子らしい格好したいし……それにもし何かあっても今日は白馬くんが一緒だ。
約束の時間に遅れないよう、少し早めに家を出た。
早く出てきたつもりなのに。待ち合わせ場所には既に白馬くんが来ていた。
「白馬くんごめん!遅くなった……」
「いや、僕もさっき来た所。それに、まだ約束の8分30秒前だ。は遅れてない」
またあの懐中時計をポケットから取り出して時間を確認する彼……時間に厳しい人なのかも。今日はジャケット姿だ。
「そっか……あ、今日はワトソンと一緒じゃないんだね」
「ワトソンには可哀想だけど、彼は一緒に店に入れないからね。じゃあ、行こうか」
白馬くんと並んで道を歩く……それだけでも既に夢みたいな気分なんだけど。
「予約入れておいたから」と連れてこられたのは、私が普段行くことのない店構えのレストラン(多分高い)で……ますますこれは現実じゃない気がしてくる……けど現実だ。財布の中身は大丈夫だったか……
「すっごいお洒落なお店……白馬くんて、いつもこういう所で食べてるの……?」
「いつもって訳じゃないけど……せっかくのデートだし、に失礼にならないようにって思って……もしかしてイタリアンは嫌いか?」
「ううん!全然好き!でも私こんないいお店で食べることって殆どないから……」
これはデートだったのか……と、ひとり頭の中で反芻する。
デートって、親しい(親しくなりたい)二人が行うものだと思う。その解釈で間違ってない……?
メニューを見ながら、料理の名前よりそんなことばっかり考えていた。