Cherry-pick【名探偵コナンR18短編集】
第18章 朧月を見上げて【白馬探】
白馬さんと知り合ってからの数日間……ハッキリ言って何をしてても時たま彼の事を思い出してばかりで、これはもしや“恋”なのでは……なんて薄々思い始めてきた。
海外の推理小説なんて今まで興味を持ったことすらなかったのに、シャーロック・ホームズの日本語訳を二冊も買ってしまったし。(読んでみたら結構面白いんだけどね)
スマホでロンドンの事を検索してみたら止まらなくなってロンドンの観光名所にやたら詳しくなってしまった気もする。
でも恋だとしたら望みはかなり薄い……格好良くて優しくて、お金持ちっぽいし、しかも普段はロンドンに住んでる人なんて……物理的にも精神的にも遠すぎる。
それにしても今日は朝から世間が騒々しい。怪盗キッドが明日の夜、宝石を盗むって予告状を送ってきたって話題でどこも持ち切りなのだ。
今回狙われる宝石は……この間、白馬さんに会った駅の近くの博物館にあるようだ。
キッドと言えば、犯行の度にあまりの人気でファンが予告現場に押し寄せ、予告時間にはテレビの生中継までされるっていうちょっと変わった泥棒だ。
何故泥棒があんなに人気なのかイマイチ分からない、っていうのが本音だ……けど、見事と言ってもいい程毎度華麗に宝石を手中に入れるキッドをテレビで見て、私も楽しんではいる。
そして翌日の夜になり。今夜は自宅のテレビで一人キッド鑑賞だ。
今回も博物館の周辺にはすごいギャラリーの数。
予告時間が迫るにつれて、彼らの声援、所謂キッドコールが大きくなっていき……ついにその時が来る。
「Ladies and gentlemen!」
今回もキッドは堂々と登場した。黄色い歓声が中々止まない。
マントを翻しながらまるで宙を飛ぶように動く彼は、数々のトラップを難なくすり抜け、宝石を盗み出す……
ギャラリーから上がる声援。
……ん?
今テレビにあの白馬さんが映った気がする、いや、映ってた……居るんだ。あそこに。
急に胸が騒ぎ出して……ソワソワして。いてもたってもいられなくて……
私は家を飛び出した。もちろん、目的地は博物館。