Cherry-pick【名探偵コナンR18短編集】
第18章 朧月を見上げて【白馬探】
「さんにとっては良くない一日だったかもしれないけど……僕は今日貴女に会えて良かった」
「……!それは、どうも……私こそ助けてもらって。しかも2回も……本当にありがとうございました」
頭を深く下げる。もし今日彼がいなかったら……と思うと恐ろしい。出会えて良かったのは私の方だ。色んな意味で……
「礼なんて要らない、当然の事をしただけだし」
「ほんと白馬さんていい人ですよね……紳士的だしすっごく頭も良さそうだし頼りになるって言うか……」
「さんが僕をどう見ているのかは知らないけど……僕達、同い年みたいだよ?貴女が警察に提出した書類に間違いがなければね」
「……っええ!?しっかりしてるし年上だとばっかり……ほんと……?」
「そんな嘘吐かない。これも何かの縁かもしれないしね。改めて、よろしく。白馬探だ」
「……です……よろしく、お願いします」
にこやかに笑った白馬さん(めちゃくちゃ格好いい)に、手をスッと差し出され、反射的にその手を取り、握手を交わした。
これは単なる社交辞令か、それともこれからがあることを期待してもいいのか……全く分からない。
「名残惜しいけど……そろそろ。僕まだ仕事の途中なんだ」
「っ!仕事中だったんですか!すみません、来てもらっちゃって……」
「いいんだ。今夜のは仕事と言っても……個人的な興味に近いものだから」
「そ、そうですか……じゃあ……また」
「うん。送って行けなくて悪いけど。くれぐれも気を付けて帰って」
白馬さんと別れ、自宅に向かって歩く。変な胸騒ぎが酷くて、足元の肌寒さなんてもう気にならない。
ふと見上げたすっかり暗くなった空には、霞が掛かったような、輪郭のボヤけた月が浮かんでいた。