Cherry-pick【名探偵コナンR18短編集】
第18章 朧月を見上げて【白馬探】
たしかに白馬さん、“警察には顔が利く”って言ってたけど、効果覿面だな。“お父上”がお偉いさんなんだろうか。
しかしまたしても女性のお尻が写る写真を机の上にズラズラ並べられて、私はギョッ!として不機嫌になりかける。
「そんなに写真を出さなくても、時刻で大体絞り込めますよね。この方が被害に遭われたのは13時55分頃だったと僕は記憶しています」
「そ、そうですね……では、おそらくこちら、ですね、あなたで間違いないでしょうか……」
「……はい」
間違いなくこの写真のスカートと下着は、私が今履いているものと同じ、つまり私なんだろう。頷いたけど……待って……私のお尻、白馬さんにまで見られてしまったのか……恥ずかしくて穴があったら入りたい……
その後淡々と書類の作成は進んだけど、ずっと机から顔を上げることが出来なかった。
「さん……大丈夫?さん?」
「は!はい!」
「終わったみたいだし、帰ろう」
白馬さんに声を掛けられるまで、心ここにあらず、だったようだ……
彼と交番を出て、なんとなくまたあの大階段の下にやってきた。
「あ……そういえばあの鳥はどうしたんです?お昼に連れてた」
「ワトソンの事か?彼は置いてきた。急いで行かなければと思ったからね」
「わ、ワトソン……?」
「彼は僕の相棒でね、とても賢いんだ」
鳥が相棒って、魔法使いか……たしかにあの鳥、盗撮犯の頭をつついてたけど。
うーん、でもワトソンって言えば、その相棒になるのはやっぱり名探偵の……
「じゃあ……白馬さんはホームズってことですね」
「ホームズは僕の憧れの探偵だね」
どちらかが引き伸ばしている訳でも、引き留めている訳でもない、自然と立ち話がしばらく続く。
所々彼の話は、住む世界が私と違うかも?と思うことはあったものの(イギリスと日本を行き来する生活だとか、お父さんが警視総監だから警察に顔が利くんだとか、“ばあや”っていう世話役の女性がいるとか)、聞いてても嫌味には感じなくて、楽しくて。
このままここでお別れして、二度と会えなくなるのは……寂しいかもしれない、なんて考えが胸にモヤモヤと渦巻き始めた。