Cherry-pick【名探偵コナンR18短編集】
第18章 朧月を見上げて【白馬探】
場所をすぐ近くの喫茶店に移して、本日何杯目かのコーヒーを頼み。先程の交番での屈辱を白馬探に話す。
しっかりとこっちを向いて真摯に話を聞いてくれる彼の姿勢は、嫌いじゃない。いや、かなり好感が持てる。(顔が美形であることとはおそらく無関係)
「そんな事を言われたんですか……最低だな」
「でしょ?私が怒ってたのも分かってくれました?」
「ええ、よく分かりました……では申し訳ないのですが、もう一度一緒に交番へ行って、被害届をきちんと出しましょう。今度はそんな無礼な真似、僕が絶対にさせませんから」
「ありがとうございます……白馬さん、いい人ですね」
「いえ……困っている女性を助けるのは、男として当然ですから」
こんなこと澄ました顔でスラスラ言う人って珍しい。私の回りにはいなかったタイプだ。きっと彼は相当モテるに違いない。
コーヒーを飲み干し、彼と共にいざ先程の交番へと向かったのだけど……
それが、交番の玄関の引き戸を白馬さんが引くなり、中にいた警察官達が立ち上がり、それぞれ顔が強張ったように思う。私の時とはえらい違いだ。
私は、警察官と白馬さんのやり取りを、ただ眺める。
「白馬さん!本日は、ありがとうございました!まだ何かございましたか!」
「いや……昼間、後から被害に遭った女性が来たら対応を頼みます、と言ったのはたしかに僕ですが……この交番ではいつも先程彼女にしたような対応をされているんですか」
「は、白馬さんのお知り合いの方でしたか!そうとは知らず大変しつ」
「僕の知り合いだったら何か変わるんですか」
「いえ……ま、誠に申し訳ございませんでした……どうか……お父上には……」
「……とにかく、今すぐ、彼女に失礼がないよう被害届を作成してください」
「は、はい!では、こちらへお掛けください……」
やたら恭しい態度の警察官に、先程と同じ椅子を進められ、座る。隣に白馬さんも立つ。