Cherry-pick【名探偵コナンR18短編集】
第18章 朧月を見上げて【白馬探】
「……これ答えないといけないんですか?」
「教えてもらえないと、立証がねぇ……あ、お尻なんて自分じゃ分からないか。なんなら椅子の上、立ってみてよ。下から見てあげる」
「は……?」
「もういいです」と言い放ち、立ち上がりズカズカ歩いて交番を出た。
信じられない、なんなの、なんなの、なんなの……!
性被害に遭っても泣き寝入りする人の気持ちが初めて分かったかもしれない。
警察なんてもう嫌。せっかくのイケメンだったけど、もらった名刺も破り捨ててやる!と鞄から取り出すと……
……その名刺に書かれていた肩書きは、警察官の階級等ではなく、“探偵”。
探偵、白馬、探……
Detective Saguru Hakuba……
かなりイラ立ってるせいで気がおかしいのかも。私は躊躇いもせずその名刺に書いてある電話番号をスマホに入力し、発信した。
「もしもし……」
「もしもし!?昼間あなたに助けられた者です、盗撮の」
「ああ。貴女ですか。どうかされたんですか?」
「どうかって……今警察に行ったんですけど、警察って酷い所ですね!あんまり腹が立ったから被害届出さずにキレて出てきたんです」
「それは……何があったんですか……」
「色々ですよ、色々!ねえ、被害届って出さないと、あの男の人罪に問えないんですか?」
「……少しでも罪を重くしたいなら、出すべきでしょうね」
「……ああ、もう……っ!」
「落ち着いてください、今は……どちらにいらっしゃるんですか?」
奇しくも今いるのは昼間に色々あった階段下。それを告げると彼は「すぐ行きます」と言い……電話を切られた。
腕を組み階段の手摺に寄りかかり、とりあえず待つ。時間的にはそろそろ夜だ。素足には少し肌寒くなってきたかも……
「一人なのー?飲み行かない?」だとかなんとか誰かに声を掛けられたけど完無視だ。今の私は機嫌がすこぶる悪い。
そして待つこと数分、あのイケメンは走ってやってきた。
「すみません、お待たせしました……」
「いいえ……早かったです」
「でもどうされたんですか……僕、警察には結構顔が利くので……力になれれば、いいんですが……」
「あんまり男の人にしたい話でもないんですけどね」
「ああ成程……なんとなく察しました。場所はこちらでも平気ですか?どこか……喫茶店でも入りますか」