Cherry-pick【名探偵コナンR18短編集】
第18章 朧月を見上げて【白馬探】
「でも私、今から約束があって」
「でしたら、後日でもいいから必ず警察で被害届を提出してください。念の為……もし何かあったらコレ、僕の連絡先です、ここに電話して」
名刺を受け取ったけど……まだイマイチ状況が飲み込めない。
「では、僕はこの男を交番に連れていきますので失礼します……日本の春は変質者が多いと聞きます、特に貴女のような魅力的な女性は尚更気を付けられた方が賢明ですよ」
なんだか照れ臭くなる気になる一言を残して、スーツのイケメンは中年男の腕を引きながら交番の方へ向かっていく。刑事なのかな。
そしてあの大きな鳥はイケメンのペットなのか……今は彼の逆側の腕に大人しく止まっている。
ただ呆然とその様子を目で追っていると……「っ!何なの!?今の!」と聞き覚えのある声。友達の到着だ。
事情を説明しながらお目当てのカフェまで歩き、席に座り。更にその話は続いた。
「まあ気持ち悪いけど、別に下着くらい撮られても減るもんじゃないよ、どこの誰なのかも分かんないだろうし。落ち込むな!!」
「そうだよねー……」
「おかげでイケメンと喋れて連絡先までゲットできたんだしさ」
「……でも連絡する用事がないもん……てか私警察行かなきゃダメなのかな?正直今となってはめんどくさいかも」
「被害届出さないと罪に問えないとか?」
「え!そうなの?でも、現行犯だよ?」
待て待て。その辺の事情はさっぱりだけど、私が行かない事であの男が無罪放免になるんだったら……それは嫌だ。
「やっぱ帰りに交番寄ろ……」
「ついてこうか?」
「いいよー、夜デートなんでしょ?」
「そうでした……ごめん」
良くも悪くも私には恋人もいない為、この後の予定も無い。
夕方近くまでひたすら喋り、カフェの前で友達と別れ。
少し重い足取りで駅の交番にやってきた。
「あのー、昼間そこの階段で盗撮された者です……」と名乗れば、中にいた一人の男性警官が面倒臭そうに立ち上がった。
そしてその人が対応してくれるんだけど……こんなことってあるんだろうか。
ローアングルから撮られた女性の脚とお尻の写真を沢山出されて、ニヤニヤした顔で写真と私を交互に見ながら「どれがあなたですか?」って。
……私はこんな辱しめを受けに来たんじゃない!