Cherry-pick【名探偵コナンR18短編集】
第17章 ふたりの蜜月*後編【赤井秀一】
たっぷり料理を皿に乗せ、席につき。お酒も頼んで、少し早めの夜がスタートだ。
本格的で手の込んだ美味しい料理に綺麗な海、目の前には大好きな秀一さん……
「わたし今すっごく幸せですー……」
「お前はいつも楽しそうだな」
「なんかそれ、バカにしてるでしょ」
「いいや?褒めているつもりだが」
「嘘だ」
「嘘じゃない」
……しばらく下らない言い合いをしていたら、先程の男の子の家族がわたし達のテーブルの横を通りかかり、「喧嘩?旅行先で」と英語で話し掛けられる。
その後、わたしにはちゃんと聞き取れなかったんだけど、秀一さんが彼らに何かを言ったらクスクス笑われて。「Get along!(仲良くね!)」と笑いながら彼らは去っていった。
「今何て言ったの?秀一さん」
「さあな……」
ニヤニヤしてる秀一さんが憎い。でも、好きなんだけどね……
ニ杯目のお酒が少なくなる頃、外の景色が少しずつ変わり始めた。夕暮れが近いと思われる。
「あっちに沈むんなら、部屋からも夕陽見れそうですよね」
「だな。そろそろ戻るか?」
お腹も膨れたし、グラスの中身を飲み干して、レストランを後にする。
沈みかけの夕陽を眺めながら部屋に戻ってきて、なんとなく二人してベッドに並んで寝転んで、赤っぽい橙色の外を眺める。
「夕焼けの海も綺麗ですね」
「見事だな……の肌まで赤いぞ?」
「ほんとだ……って秀一さんもですよ」
小さく笑いながら、夕陽に照らされて赤く見える肌を触り合っている内に視線がしっかりと絡まり。どちらからともなく唇が重なった。
無言のまま、ただなんとなくキスを繰り返していると、いつの間にか部屋中に甘い空気が漂い出してドキドキしてきた……
そう、こういうのだよ、身体を重ねるんなら、こういう風な始まりがいい。
海の中で突然とか、お風呂でイキナリするとかじゃなくて。
ゆっくりと湿った柔らかな舌を絡ませ合えば、頭の中まで蕩けてきそうだ……
「なあ、……」
「ん?」
顔を近付けたまま、ぽつりぽつりと秀一さんが言う。