Cherry-pick【名探偵コナンR18短編集】
第16章 ふたりの蜜月*前編【赤井秀一】
ハシゴに脚を掛けてゆっくり下りていけば、海面に近付くにつれて、海の底までハッキリ見えてきた。クリアな青色の中に小さい魚も沢山泳いでて……
めちゃくちゃ綺麗だ。写真のまんま。いや写真以上かも……!
最後はわたしも飛び込んだ。(大した高さからじゃないけれど)
底に両足の裏を着けて真っ直ぐ立てば、海水の高さは肩の下くらい。両腕で大きく水を掻きながら秀一さんの方へ歩いて向かう。
「きもちいですねー!すっごい綺麗だし……!」
「ああ……これだけ透明度が高いとの白い肌もよく見える」
何やら愉しそうに近付いてきた秀一さんに浮き輪を上からスッポリ被せられた。穴から腕を出して捕まれば、身体が浮かび上がる。隣で秀一さんは手足を伸ばして仰向けに浮かんでいる。
「あー……最高です……」
「たまにはこういうのも良いもんだな……」
「後で写真撮りましょう!みんな送れってうるさいから」
「ああ……俺の家族もそうだ」
「みんな元気にしてるかな……」
「便りが無いのは元気な証拠、だろう」
「たしかに」
ただのんびり、ぷかぷかと浮かんでいるだけ。
こんなに無防備な状態で、そしてそもそも素顔の秀一さんとこんな風に過ごせるなんて……東京に住んでた頃は夢のまた夢だった。
ただ、この先二度とあんな事態にならない保証もない。なのでそれまでは、とことん穏やかな時間を楽しみたい所……
ちなみに子作りはまだだ。前にお節介な誰かに聞かれてそんな話になった時は、わたしがアメリカに慣れてからの方がいいだろう、って秀一さんは言ってたけど……
それってどこで“慣れた”って判断するんだろ……今のわたしは日常生活にはもうそれ程困ってないし……つまりもしかしてそろそろ?なんて最近思わないでもない。
「……考え事か?」
「っえ?まあ……?」
海の先の方、水平線の辺りをぼんやり見ながらそんな事を考えてたら、いつの間にか秀一さんがスグ横に立っていて。思わず頭で考えてたのとは全然違う呑気な返答をしてしまった。
「どこまでなら足着くかなーって」
「行ってみるか」
「はい!」