Cherry-pick【名探偵コナンR18短編集】
第16章 ふたりの蜜月*前編【赤井秀一】
買ったばかりの水着を着けて、肌が出る部分に日焼け止めを塗って。パーカーを羽織って前を閉めれば完了……なのに。
「……なんでまた上着を着るんだ」
「コレ?だって焼けたくないし」
「今は良い日焼け止めがあるだろう……せっかく新調した水着も、隠したら意味が無い」
……秀一さんがそれを脱いで欲しがってるのは明らか。
“脱ぎたくない”と反論した所で、秀一さんは絶対退かないだろう。
でもなぁ……せっかくの新婚旅行だ、言い合いもしたくないし……早々に諦めて彼に背中を向けてパーカーを脱いだ。
「……じゃあ背中……塗ってくださいよ……これ」
「まあ……俺はの背中がシミだらけになろうが愛しているがな」
「そんなの絶対嫌です!ちゃんと塗れてなかったら怒りますよ」
「分かった分かった……」
満足そうな声色の秀一さんを背にしてしばらく身構えていると……背中にとろみのある液体が塗り伸ばされていく。くすぐったいような、気持ちいいような……
水着の紐を引っ張られ、その下にも丁寧に塗り込まれて。
だけど腰を撫でる彼の手付きがどうもヤラシイ、そう感じた直後、水着の中に秀一さんの手が入り込んできた。どう考えてもお尻の感触を楽しんでるようにしか思えない。
「ちょっと……そこは、いいです」
「南国の日差しは強烈だからな」
「もう大丈夫ですから!秀一さんの背中も塗りますよ!あっち向いてください!」
手を払い除け、彼の広い背中にクリームを塗り伸ばす。
わたしをからかうのって、そんなに楽しいのか?こっちは全然楽しくない。
……にしても秀一さんってほんとイイ身体してるんだよな……なんて思ってると、次第に怒る気は失せてくる。
準備も整って、やっとだ。部屋のテラスから下へ伸びているハシゴに脚を掛けようとしていると、秀一さんは大きな浮き輪を片手に、わたしの隣からそのまま海へ飛び込んでいってしまった。
少しだけ離れた所で立ち上がった彼の様子を伺うに、そんなに底は深くなさそう。私でも普通に立てそうだ。
「どうした、怖くて下りられない訳ではないだろう?」
「違いますー!今行きますー……」
(本当は少し怖い、と言うか、少し緊張してる、に近い)