Cherry-pick【名探偵コナンR18短編集】
第16章 ふたりの蜜月*前編【赤井秀一】
「いい天気ー!気持ちーい!」
「一気に春を越して夏だな」
空港を出て、久しぶりに太陽の強い日差しの下に出た。心地好い風からは、鮮やかな色の花の香りに混じって微かに潮の香りも感じる。
秀一さんと二人、太平洋に浮かぶ小さな南の島にやってきた。
言葉にしてしまうと陳腐に思えて残念なんだけど、まさに青い海に白い砂浜、青い空に白い雲!っていう、絵に描いたような光景の島。
無駄にテンションが上がってしまうのを抑えられない。秀一さんの機嫌も良さそうで何よりだ。
今回予約を取ったのは水上バンガローを二泊。青のグラデーションの海を誰にも邪魔されずに思う存分満喫できる……はず!
空港からタクシーに乗ってしばらく、ホテルに到着し。海の上を歩き部屋に案内されれば……もうわたしのテンションは最高潮だ。
「やばい!すごい!すごい!」
「……地上の楽園と言われるのも頷けるな」
「ねー!写真の中に来たみたい!」
広々した室内に、超開放的なテラス、勿論海は見放題入り放題。ふっかふかのベッドからも、お風呂からも、ずっと海が見れる。
到着からまだ間もないけど、既に“来てよかった!”と、間違いなく確信できている。
せっかく南の島に来たんだから……って理由で頼んだ、大きなヤシの実に入ったココナッツジュースを両手で抱え、テラスの椅子に腰掛けて脚を伸ばす。と、隣に秀一さんも座ってきた。
「さて……どうする?」
「やっぱりまずは海ですかね、とりあえずコレ飲まなきゃだけど……」
「大して美味いもんでもないだろう?」
「む……1回飲んでみたかったんですー」
「ちょっと貸してみろ」
「はい……?」
なんで……?と思いつつもヤシの実を秀一さんに差し出せば、彼はそれを片手で受け取り高く持ち上げた。と思ったら中身を一気に飲み干してしまったようだ。空になったらしいヤシの実を秀一さんはテーブルの上に無造作に置いた。
「うそっ!全部飲んだの!?」
「そんなに欲しければまた頼めばいい。早く支度をしろ」
「はーい……」
まあ、感動する程美味しいってものでも無かったし、いいんだけど……
秀一さんが服を脱ぎ出したから、私も海に入れるよう着替えを始めた。