Cherry-pick【名探偵コナンR18短編集】
第16章 ふたりの蜜月*前編【赤井秀一】
「ねえ秀一さん、新婚旅行は英語で何て言うんですか?」
「honeymoonだ」
「……ハネムーンって言った?」
「そうだな」
「綴りは?」
「そのままだ、蜜のhoneyと、月のmoon」
「蜜月……なんかやらしー……」
「……知らんのか?日本でも蜜月は新婚のことだろ」
「そうなの!?蜜月って怪しい仲良しの関係ってイメージですけど……」
スマホ片手に辞書を引いてみれば、なんとその通りで。怪しい関係ってのも間違ってはなかったんだけど、“蜜月”には“新婚”って意味があるそうだ。
秀一さんの頭の中の情報量って、私の数倍、いやそれ以上なんじゃないかと未だに思う。
「俺達の旅行は何処にする?」
「うーん……私どこも行ったことないから本当にどこでも行きたいんですよね……」
「南の島か、ヨーロッパの街ならどちらがいい」
「ああ……うーん……決められない……秀一さんは?」
「俺は……どちらかと言えば海か」
「それ、もしかして周りを全部見渡せるからってやつじゃないですよね」
「それもあるが……久しぶりに水着のも見れるだろう?」
「そうですか……じゃあ、南の島……?」
「ああ。ヨーロッパは此処からなら近いしな。そのうちいつでも行ける」
そうなのだ。以前とは状況が全然違うのだ。
どこへ行くにも“沖矢昴”に変装しなきゃいけなかった、東京からはあまり離れられなかったあの時とは違う。
秀一さんの顔付きががなんとなく楽しそうで。こういう顔を見てると、ついわたしもニヤけそうになってくる。
「ですね。じゃあ新しい水着買っちゃおうかなー」
「俺が選んでやろう」
「……自分で選びます」
秀一さんに選ばせたら、極端にセクシーなものにさせられる気しかしない……ので遠慮しておいた。
それから行き先、泊まるホテル、現地でやりたいこと……ちょこちょこと蜜月旅行の予定は決まっていき。
水着も買って、荷造りも完了して、いよいよ出発となる。