Cherry-pick【名探偵コナンR18短編集】
第15章 歪な感情……憩の場所【ジン】
「……中々美味い、大したもんだ」
「ほんと……?ありがと……ジンに褒められるとなんか変な感じー」
出来上がった夕食を二人で食べていると、彼が彼らしくない言葉を発した。ジンはお世辞とか言うタイプじゃないから、素直に嬉しい。
「、メシ屋も出すか」
「……?……そんなの、無理だって」
「時間的にか」
「それもだけど、私に飲食店は無理!」
「店が無理なら、これから俺の分も夕食を用意するというのはどうだ」
「なんでそうなる?」
「お前のメシを食いてえだけなんだが」
……彼の真意が分からない。いや、それこそ“料理を食べたい”が真意なのか……?
「金か?足りないなら払うぞ」
「もう十分すぎるくらいジンにはもらってる。そういう事じゃなくて……」
「何故だ」
「……そういう事は、彼女なり奥さんなりにしてもらえばいいでしょ?」
「そんな奴はいない」
「いくらでもいそうなのに……お金持ちみたいだし?背も高いし顔だってカッコイイんだしさ……」
またジンが黙ってしまった。怒ってないよな……?
相変わらず顔色の変わらない彼の様子をしばらく伺う。
「分かった……、お前が俺の女になれ」
「……!?」
「それで文句は無いだろう」
「……あの、何言ってるか分かってる?」
「当然だ」
「……本気?」
「特定の女など無用だと思っていたが、毎晩美味いメシがお前と食えるなら、それもいい」
本当にこの人の思考回路は意味不明だ。まだ“ヤリたいから付き合おう”って言われる方がよっぽど分かりやすい。
「……少し考えさせて」
「いつまでだ」
「……っていうかジンは私のこと好きとか、そういうのじゃないんでしょ?」
「……じゃあ聞くがどういう状態なんだ、好きというのは」
「それは……一緒にいたら楽しいとか、ドキドキするとか……気付いたらその人の事ばっかり考えちゃうとか……」
「フン……」
食事を終えたジンは、胸ポケットからタバコを取り出し、立ち上がると窓際へと動いた。
「ジン、それ吸ったら、もう今日は帰って」
「ああ……」
その後は特に大した会話もなく、ジンは帰り……ようやく一人になる。
ジンとどうこうなるなんて考えたことも無かった。是非を問われても、想像の域を越えてて、よく分からないのだ。