Cherry-pick【名探偵コナンR18短編集】
第15章 歪な感情……憩の場所【ジン】
翌日は特に変わった事もなく普段通り店を営業……そして終了し。
店のドアの鍵をガチャりと閉めた瞬間、背後に徒ならぬ気配を感じ……バッと振り返る。
「ジ、ジン……!びっ、くりした……ぁ」
「大した驚きようだな」
「驚くって!……何か、あったの?」
「そうだな。来い」
「えええ……何?」
呆然としてる私の腕はジンに掴まれ、手を引かれながらスグ傍に停められていた車へと連れて行かれる。
「乗れ」と言われ、逆らう理由も特にないので車に乗り込む。
相変わらずジンの考えは読めなくて、今から何処へ連れていかれるのやら……不安が胸に渦巻く。
「あの……どこ行くの?」
「腹が減ったと思ったら、どういう訳だかのツラも浮かんできてな……お前も連れていくことにした」
「それだけ……?」
「ああ……お前は何でも美味そうに食う、メシの相手にちょうどいい」
「そう……あ……っ!もうお店予約とかしちゃった?」
「いや」
「私今日は家で食べるつもりだったから……朝準備してきててね……お米もうすぐ炊けちゃうし……今度にしない?」
「俺は今とメシを食いたい」
「……断れない感じ?」
「家にメシがあるなら俺もお前の家で食えばいいだろう」
「あ、そっか。って、えっ!?」
「決まりだな」
どことなく愉しそうとも取れる声で小さく笑ったジンが、車を出す。
別にジンがウチ(一人暮らし)に来るのを拒む理由も無いけれど、一応彼も男性だ、ちょっと……構えてしまう。まあ彼は私になんて興味は無いか……
スーパーに寄り食材を買い足し、ジンと共に自宅に帰って来たはいいけど……家にジンが居ることが、異様で仕方ない。
狭いキッチンで食材を確かめていると、小さく、カキーン……と心地よい金属の音がして、ジンを見ればタバコに火をつけてたもんだから慌ててベランダへの窓を開ける。
「タバコ吸うんならここで!」
「全く……近頃は何処も彼処もそうだな」
悪態を吐きながらも、ちゃんとジンは窓際へ移ってくれた。
タバコの臭いが部屋や服に着くのは好きじゃないけど……男性のタバコを吸う仕草は結構好きだったりする……ジンも例外ではない。サマになってて格好いい。
無言で外を眺めながら紫煙を吐くジンを横目に、夕食の準備を開始した。