Cherry-pick【名探偵コナンR18短編集】
第15章 歪な感情……憩の場所【ジン】
ジンは、誰のことも信用しないんだろうか。たしかに彼は人と群れるタイプでは無いようだけど。
裏切られて傷付く事はなくても……そんなずっと一人ぼっちみたいな状態で、虚しくなったりしないんだろうか。
それにつまりは……ジンは私のことも信用してないってことになるのか。なんか、寂しいかも。
彼の髪を乾かしながら、そんなことを考えていたけど……
「今日店は俺で最後か」
「そうだけど?」
「久しぶりにメシでもどうだ」
「……!、どしたの珍しい……」
「フラれたを慰めてやろうって言ってんだ、有難く思え」
「はは……ありがとう」
この男にも“人を慰めてやりたい”って感情はあるみたいで、何故か少し安心に近い気分になる。
ジンとちゃんとした食事に行くのは二度目だ。一度目はたしか、店の開店祝いだった。席はカウンターのみの、小さいけどいい雰囲気のお店で、美味しいお肉をご馳走になったのを覚えてる。
そして今日も同じ店に連れてこられた。
お酒も進むと、ついつい色んな事が口をついて出てくる。
「ねえ、ジンって誰のことも信用しないの?」
「……ああ、そうだな」
「私のことも?」
「……俺の髪を切らせる人間としては、信頼している。ここの店主もそうだ、間違いなく俺の満足のいく酒と肴を出す」
「ふーん……変わってるよねジンって……」
「お前は俺の何を知っている?よく知りもしねえ癖に」
「……そういえば、あんまり知らないかも」
「知らない方が身の為だ」
「何それー。ジンって実はほんとにアブナイ男?」
「さあな……」
またジンは黙ってしまった。よくある事だからそんなに気にもしないけど。
食事も終わって、帰宅。
お風呂に入って、ふと鏡の前で自分の首元に触れてみる。
……ジンってやっぱり変な人だ。
何考えてるか全っ然分かんないし、そもそも、私とは生きてる次元が違う感じがする。ジンのいる世界にも興味はあるけど、知った所で私には理解出来ないのかもしれない。