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Cherry-pick【名探偵コナンR18短編集】

第15章 歪な感情……憩の場所【ジン】


……何のことだか直ぐには理解できなかった。

“急に言われても困ります” と “もう俺は決めた” の言い合いの末……結果彼が強引に押し切る形で、私は勤めていた店を退店し、自分の店を持つこととなった。

これが映画だったら、“シンデレラストーリー”とか?そういう風に言われるのかもしれない。

店を持たせてもらえるなんて、たしかに夢みたいな話だ。

けど、これはキラキラした夢とはだいぶ違う。


黒澤陣(クロサワジン)……来客名簿にはそう書かれていた。その名の男の言うままに店を出す準備を進め、遂に明日オープンとなった日、彼は信じられない条件を突き付けてきた。


・店にかかる全ての経費はジンが持つ(とても有難い)

・の給与は年俸制(まあ、良い)

・従業員は雇わないこと(まだ納得出来る)

・ジンの来店時、店内には他の客を入れない(ギリギリ納得)

・ジンが店に来るとなったら昼夜問わず対応すること(これはちょっと厄介)

・勝手に店を辞めない。辞めた場合はも、その身内も、危ないと思え(……ヤ〇ザですか)


勝手に私の身内まで人質に取るなんて滅茶苦茶だ。そんなに私って辞めそうに見えるのか?でもまあ、勝手に店を辞めなければ良いのだ、その条件を呑んだ。


風変わりな人間の下で働くことになった……と思いながらこの一年必死でやってきた。幸い、怖い思いをしたことはまだ一度も無く、運営も順調と言える。


前に、どうして私にここまでしてくれたのかと尋ねたら、「俺にビビらずにハサミを向けられる美容師はそういない、他の奴らは殆ど手が震えてんだ、そんな奴に髪を切らせるのはゴメンだ」とだけ返ってきたのを未だにハッキリ覚えてる。


本当に変わった人……そのジンが最後に髪を切りに来たのがちょうど一月前。ほぼ月に一度の頻度で彼はやって来るから、次はそろそろなんじゃないか、と近頃構えている所なのだ。
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