Cherry-pick【名探偵コナンR18短編集】
第13章 好きだと言うのは難しい【服部平次】
「はこない可愛らしい顔もできるんやのぅ」
「……か、かわいらしいって」
「そのままの意味や」
何が起こったんかまだ頭がついていかへんし……ただ呆然としてたら可愛いとか言われるんやし……こんなん調子狂ってまうわ……
なんとか気を持ち直して広げっぱなしやったプリントやらペンを片付けるけど。
平次のせいで、せっかくさっき頭に入れたテスト対策はほとんど飛んでってしもたんやないやろか……
でも今、気持ちがえらいフワフワしてる。不思議なくらい……悪くない気分。
「ほな、勉強も終わったし、言いたい事も言えたさかい……」
「うん……」
「あとはリラックスしてしっかり寝ぇやー。は気合い入りすぎるといつも寝れへんでな」
「せやせや。遠足の前の日ぃとかな」
平次が立ち上がり、部屋を出てこうとする。ふと、寂しいような気になるけど……
「ほな、おやすみ」
「おやすみ……ありがとうね、平次……」
「お、おう……」
おやすみの挨拶をして、ヒラヒラ手を振って平次は出ていった。
そのうち平次の足音も聞こえへんようになって、シーンと静まり返った服部家。もう平次のオトンとオカンは寝てるやろか。
アタシもしばらくして部屋の電気を消して。
布団に入って目を閉じたけど……これが中々寝付けへん。
なんでか知らん、自分の唇を触ってみては、さっきの事を思い出して……一人ドキドキして……
どれくらいそうしてたやろか。
……アカン、どないしよ。全然寝れへん。
「平次……」
無意識にポツリと平次の名前が口から出てきた。
「なんや、呼んだか?」
「……っへ?」
廊下から平次の声が聞こえた気がしたけど……気のせい、じゃなかったみたいや。
「起きてるんか?入るで」
「平次?……なんで?」
平次が部屋の襖を開けて入ってくるなりアタシの布団の真横に寝そべってきた。暗くても少しは見える。
「ど、どないしたん?忘れもんか?」
「がちゃんと寝れとるか心配でな、様子見に来たんや」
「当たりや、全然寝れへん……平次は気にせんと寝ればええよ」
「それがな、俺もサッパリ眠れへんのや」
「平次もなん?そりゃ災難やな」
「せやろ?」