Cherry-pick【名探偵コナンR18短編集】
第13章 好きだと言うのは難しい【服部平次】
「……っ!?なんで?平次おるやろ?彼女……」
「あれは彼女とちゃう。告白した俺の事アホ呼ばわりしてコケにした誰かさんにヤキモチ焼かしたろ思て、寄ってきた女と適当に仲良うしとっただけ」
「……ウソやろ」
「ホンマやホンマ」
「ア、アンタ……ほんまにアホなんとちゃうの……」
「……も俺のこと好きなんとちゃうんか?正直に言うてみ」
「……っ!!!」
平次の頭がズイっと近付いてきて、めっちゃ近くで顔を覗き込まれる。目線は逸らしたけど、アカン、身体が震えてきた。
でも、それなら……今度こそ、言わなアカン。
言え!アタシ!
「……へ、へいじ、が、すき、や……アタシも……」
何度も“こう言えば良かった”と思てたセリフを、なんとか絞り出す。
「よー聞こえへんかったなー。ちゃんとこっち見て、もう一回」
「……嫌や!」
咄嗟に平次の方を向いてしもた……けど絶対人のことバカにしたような顔して笑てると思たのに、平次の顔付きは違うて。
「俺かて二回言うたんや。ええやろ?」
一年前のあん時もこんな感じやったかもしれん。ちょっと不貞腐れてるみたいやけど、真っ直ぐコッチを見てくる視線が熱くて……胸が締め付けられる。
平次ってこない格好良かったっけ……
「……平次が、好きや」
「これで、あいこやな」
気持ち悪いくらい優しく笑た平次に頭を撫でられて、なんか身体が縮こまってしまう。
そのまま平次の顔が更に近付いてくるもんやで、よう分からんと後退りしたら、平次もついてきて……
後ろに下がって下がって、ついに壁に背中がついてしもた。
「もう逃げられへんな」
「へ、平次……?えっ何?えぇっ……?」
「ちょっと黙っとれ。それと、目ぇ閉じろ」
真ん前に迫ってきた平次の真剣な顔に、息が詰まりそうなんやけど……黙ってギュッと目を瞑った。
その少し後。
唇に何か柔らかいもんが当たって、離れた。
これって、これって……今もしかしてキスした!?
そしたら目っていつ開けたらええの……
「いつまで目ぇ瞑ってんねん」
「へ、いじ……」
「なんや?もっぺんして欲しいんか」
目を開けて、ちゃう!って言おうとしたら、迫ってきた平次に口を塞がれた。平次の口に。
やっぱりこれって、キスしてる、ってことやんな……