Cherry-pick【名探偵コナンR18短編集】
第12章 助けて!お巡りさん!【諸伏景光】
路地裏に入り、諸伏さんの家の目と鼻の先だと言うバーに連れてこられた。
カウンター数席と、小さなテーブルが一つあるだけのこじんまりしたお店だ。
「こんばんはっす、ヒロさん・・・と・・・女の子も一緒っすか!?」
「悪いか」
「いや、全然っす!」
マスターらしき男性と諸伏さんが、親しげに言葉を交わす。ここはよく来る店なんだそう。
それはいいんどけど、どうも私、すごい見られてる・・・諸伏さんが女連れで飲みに来るのがそんなに珍しいのか?
そして彼はいつもはカウンターに座るらしいんだけど、今日は私がいるからテーブルにすると言う。
「私カウンターでもいいですよ?」
「あー・・・だって、やっとゼロと松田から離れて二人になったのに。アイツに邪魔されたくない」
諸伏さんは店の男性の方を顎で指す。なるほど。
「それなら真っ直ぐ諸伏さんのお家に帰ってもよかったのにー」
「えっ!?・・・まあ、段階ってもんがあるだろ」
「だんかい・・・?」
「せっかく知り合ったんだし、仲良くなりたいからさ」
「・・・そうですね!」
お酒を頼み、二人でグラスを合わせた。
話の内容は何でもないことなんだけど・・・今日初めて会った人とは思えないくらい、諸伏さんとはテンポよく会話が続く。
私の大したことないくだらない話にも、楽しそうに笑ってくれるし。ほんと、いい人だよなぁ・・・
今夜一晩お世話になるだけ、なのに。この人にどんどん惹かれていく自分がいて恐い・・・
きっとこれだけ素敵な人だ。モテるんだろうし、彼には恋人がいたっておかしくないと思う・・・
今日一緒にいられるだけで、それでいい、と自分の気持ちにブレーキをかけ続けた。
「なあ、“諸伏さん”って呼び方やめないか?なんか他人みたいだ」
「うーん・・・じゃあなんて呼んだらいいです?」
「ヒロとか、ヒロくん、とか」
「・・・ヒロくん」
「うん。それでいい」
穏やかに笑う諸伏さんにつられて自然と私も笑ってしまう。
この感じ・・・なんだろう。すごく居心地がいい。