Cherry-pick【名探偵コナンR18短編集】
第1章 月夜に現れた紳士は【キッド/快斗】
「さんは・・・私に会いたかったですか?」
キッドが一歩こちらに近付き、肩の辺りに触れてくる。
二人の間の距離約30センチ。
いきなりの急接近に、キッドの顔が見たい反面、恥ずかしくて顔を上げられなくて、目線は目の前のネクタイと喉元を行ったり来たり・・・
「・・・会いたかった」
消え入りそうな声で答えた。
フワッとマントが翻ったと思えば、キッドの腕の中に閉じ込められた。
頭を撫でられて、そのまま彼の胸に抱き寄せられて。
思ってもみなかった展開に、鼓動が更に跳ね上がる。
よく知りもしない人に抱きしめられているのに、ひとつも嫌だという気はしない。
自分からも腕を回して、そっと彼に抱きついた。
「おや・・・まずは貴女と散歩にと思ってたんですが。予定を変更しましょうか」
「・・・う、ん?」
「これから私と貴女の間に何が起こっても、秘密にできると、約束して貰えますか?」
「言いませんよ?キッドがここにいるなんて」
「では、誓いのキスを・・・」
「ぇ・・・っ」
顎を指先で上げられて、何事かと考える間もなくすぐに唇が塞がれる。
目を閉じてそれを受け入れる。
唇がゆっくりと離れて、目を開けると、見覚えのある、歯を見せて笑う口元と、目元が見えて・・・って・・・え。
「あなた、く、ろばくん・・・?」
「気付いちゃった?」
「え、え、っ・・・キッドって」
「ぜってー内緒な」
彼がシルクハットを放り投げた。
イシシ・・・と笑う口元が近付いてきて再びキスされそうになる。
力いっぱいキッド?いや、黒羽くんの胸を両手で押して、彼からできる限り離れた。
「・・・ちょっと!」
「俺じゃダメなのー?さっきはポーっとしてたのに」
「ダメっていうか・・・黒羽くんだとは」
フゥーっと大きく息を吐く黒羽くん、そして息を吸い込むと、顔付きが凛々しく変わる。
「キッドの私なら、お相手してもらえますか?」
「待って・・・」
ここ最近でダントツ一番、頭がこんがらがっている。
キッドは実は黒羽くんで黒羽くんがキッドで・・・
黒羽くんに感じてた既視感はコレだったのか。
「今夜は貴女を頂きに来たんですから。逃がしませんよ」
再び抱き寄せられて口付けられる。
・・・あの、頂かれたいとは思ってたよ?
でも想像と違いすぎる。