Cherry-pick【名探偵コナンR18短編集】
第1章 月夜に現れた紳士は【キッド/快斗】
先生と別れ、一人暮らしの自宅に戻ると時刻は9時。
お風呂に入るか、このままキッドを待つか。
このままじっとしていたら、考えることが多すぎて頭がパンクしそうなのでシャワーを浴びることにした。
キッドとはどうせ暗がりでしか会わないんだから、スッピンで良し、という判断が下った。
ただ、タキシードで来るであろう彼に対してパジャマでは不釣り合いすぎるので、ゆったりとしたワンピースを着て。
10時5分前。
部屋の明かりを消して、小さなキャンドルに火を付けた。これくらいならいいだろう。
キッドのカードと、先日彼が置いていったバラの花を並べて、ゆらゆらした灯りの中、それらを眺める。
ロウソクの火には、心を落ち着かせる効果があるとか聞いたことあるけど、今の私には全く効いていない。
10時ピッタリに、ベランダに降り立った人影。
立ち上がりカーテンを開けると、待っていた人物がそこに立っていて。
鍵を外し、窓ガラスを開ける。
「こんばんは。お邪魔しても?」
「はい。どうぞ・・・」
外の空気とともに、キッドが部屋の中へ入ってくる。
窓を閉めて、そのまま窓際で立ち尽くしたまま、見つめ合う。
(と言っても彼の目元はよく見えないが)
「やっと・・・お会いできましたね、さん」
「・・・はい。私の名前、知ってるんですね」
「ええ。怪盗ですから。下調べは当然です」
相手がキッドでなかったら、お前ストーカーか!と恐怖に慄く所かもしれないが、不思議と嫌な気はしなくて。
「どこまで知ってるの?」
「色々存じておりますよ。土曜日はご実家のテレビでこの怪盗をご覧になられたこととか」
「そ、そうです」
「先程まで男性と会われていたこととか」
「嘘・・・見てたの?」
「暇だったもので。お付き合いを申し込まれたとか?」
「えっ!?」
「でも貴女は彼のことを男性としては見れないから断った」
「すごい・・・だいたい、そんな感じ」
「ほかに気になる男性がいるようですね」
何故キッドはそんなことまで知ってるのか。
しかも気になる男性って、まさに目の前のあなたのことですけれども。
そこまで見透かされてる・・・?
どうしたらいいか分からず、目が泳ぎ出す。