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Cherry-pick【名探偵コナンR18短編集】

第8章 光の交わるところ【諸伏景光】


「俺はヒカリを手篭めにしろって言われてるんだ、上手くできてるのを装わないと」

「そっか」


・・・すごい複雑。
ヒカルさんの事、素敵だな、って・・・たしかに思いはしたけど、その人は実はヒロくんで?しかも警察官で?黒田の所に潜り込んでるスパイで・・・?


でも昔からヒロくんの言う事はいつも正しかった。今もきっと、ヒロくんに従うのが一番、なんだろう。





それからしばらくして。

ヒロくんが店に来る頻度は減った。その代わり「“恋人”を装う為だ」と休みの日や仕事終わりにちょこちょこ会うようになり。(ほとんど行き先は黒田の息のかかった店ばかりで窮屈だけど)

なんか本当に付き合ってる錯覚に陥りそうなくらいだ。

ちなみに黒田には“ヒカリとは上手くいってる”と報告してるらしい。

ファミリーを潰せる証拠も着々と集まってるようで、最近ヒロくんは「あと少しだからな」と、私の頭を優しく撫でてくれたりする。

あと時には肩を抱かれたり、腰に手が回ってきたり・・・そういう風にされると、少し胸がザワつく。

彼は“恋人”を装う為にこういう事をするんだろうか?・・・分からなくてずっと気持ちは複雑なままだ。


でも、ヒロくんが現れてくれたことで、私の世界は確実にまた明るくなってきた。

それと同時に、自分がどんどんヒロくんに惹かれていっている気がして堪らなかった。
こんな恋人ごっこじゃなくて、ほんとに恋人だったら・・・





数日後。店は定休日の夜。

ヒロくんと二人で食事に来ていた。場所は例によって黒田ファミリーの経営する店。
勿論私は彼のことを“ヒロくん”とは呼べず、ずっと“ヒカルさん”と呼んでばかり。
・・・もどかしい。


「ちょっと・・・ヒカリさん今日ペース早すぎじゃないか?」

「いいのー。今日はなんか飲みたい気分なの」


もどかしさを酒で晴らすように次々と酒を流し込む。
少し酔ってくれば、多少気分はマシになるだろう。

職業柄お酒に耐性はあるし、酔って人に迷惑をかけたことはこの数年ない。


しかしその二時間後、店を出た私の足元はおぼつかない程に・・・酔った。


「ヒカリさん大丈夫か?」

「だいじょうぶ」

「どっか・・・カフェでも入って休む?」

「やだ」


酔った人間の思考回路はとても単純になるんだろうか。思った事をすぐに口に出しそうになる。
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