Cherry-pick【名探偵コナンR18短編集】
第8章 光の交わるところ【諸伏景光】
バーを出て二人でタクシーに乗り込む。
「どこ行くの?」
「俺ん家。何喋っても聞かれる心配がない。一番安全だ」
「う、うん・・・」
「本当は最初から家に連れて来たかった所なんだけど。ヒカルのまま誘ったって絶対来ないだろ?だから、まずは俺を信用してもらってから、と思って」
「だったら最初から景光だって言えばよかったじゃん!私が似てるって言った時に」
「あー・・・まあ、話すと長くなるんだけどな、家についてからだな」
ヒロくんが一人で住んでるマンションに連れてこられた。
少し意識してた男性の家に二人きり、っていう妙な胸騒ぎもなくはないけど、相手はヒロくんだ・・・きっと何もないんだろう。
「俺はな、警察官になったんだ」
「えっ!!」
「で、今は、黒田の集団を捕まえる為に奴らのグループに入り込んで、潜入捜査をしてる。意味は分かるよな?」
「それくらい分かるよ、スパイってこと?」
「そうそう」
ヒロくんは、ファミリーに潜入し、黒田に気に入られるよう動いていて・・・ある日頼まれ事を引き受けてみれば、その相手が数年ぶりに会う私だったからビックリした、すぐには言えなかったけど、私が黒田の元を離れたいと真剣に考えている事が確認できたから、正体を明かしたと言う。
それで、ヒカルの正体を内緒にするのは勿論、ファミリーの解体に協力してほしいと。
黒田が失脚すれば、私も自然と拘束からは開放される訳だけど・・・
「協力って・・・例えば?」
「黒田と幹部が店に来たら教えてほしいのと、もし接客中に何かしら良くない話が聞こえたらしっかり記憶しといて」
「・・・うん」
「でも・・・既に奴らの事で知ってる事も・・・あるんじゃないのか?」
・・・ある。
今まで見聞きしてきた黒田に纏わる悪い事柄を思いつくまま挙げていく。
真剣な顔をしてそれを書き留めるヒロくんは、ヒロくんのようでそうでないような・・・少し怖いとすら思う。(黒田が怖いのとは全く違う)
「まあ、基本的には今まで通り何も知らないフリを続けて」
「うん。それなら得意」
「職業柄か?」
「うーん・・・そうだね」
「じゃあ・・・そろそろヒカルとヒカリさんは付き合うことにしようか」
「えっ!ヒロくんと付き合うの!?」
「フリだ、フリ。できるだろ?」
「で、できるかな・・・」