Cherry-pick【名探偵コナンR18短編集】
第8章 光の交わるところ【諸伏景光】
「なあ、ヒカリさんは黒田さんの女なのか?」
「はっ?えっ!?まさか!ないない」
「だよなー・・・さっき他の女の子に言われたんだ」
「・・・何考えてるのかなーもう・・・」
たまにあることだ。特にこういう“超優良物件”みたいなお客さんを持つと、妬みからなのかあらぬことを他の女の子に吹き込まれたりする・・・
「でも実際黒田さんとはどんな関係?」
「うーん・・・まあ、若い頃に仕事と家を黒田さんに世話してもらったっていうのはあるけど。それからは店のオーナーと従業員?それ以上でもそれ以下でもないかな。どうして?」
「ふーん・・・なんか、ファミリーの幹部連中もヒカリさんと仲良いって耳にしたから」
「それは語弊があるかと・・・顔見知りなくらいです。あの・・・やっぱりヒカルさんもファミリーの人なんですか?」
「俺なんて下っ端だけどね」
「オーナーがウチに連れてくる人は皆やり手の人ばかりだって聞いてますよ」
「そう思ってもらえてたら光栄だけどな」
改めてヒカルさんは黒田の部下なのだと認識させられる。分かってた事だけど、心はどんどん沈んでいく。けど暗い顔はしないよう、必死で明るく努めた。
「ヒカリさんは、将来どうなりたいって考えてるの?」
「将来・・・私は・・・本当に普通の家庭に憧れてるんですよね」
「普通でいいのか?」
「普通がいいんです。私色々普通じゃなかったから・・・」
ヒカルさんに初めて、自分には親がいなくて施設育ちだった事、そのせいで小学校でいじめられた、でも助けてくれた二人の男の子がいたから辛くなかった、って事も話した。
「すみません・・・なんかしんみりしちゃいますよね」
「いい。俺はヒカリさんのこと、もっと知りたいと思ってるから。悩みとかあるなら聞くし、何でも話して?」
「そんな・・・」
「・・・ありそうだな、悩み事」
「まあ・・・あるのかな・・・」
じっと目を覗き込むように見つめられて、息が詰まりそうになって・・・斜め下へ視線を逸らした。