Cherry-pick【名探偵コナンR18短編集】
第8章 光の交わるところ【諸伏景光】
彼の「また飲みに来るよ」はよくある社交辞令だと思ってた。
ところが、それからヒカルさんは二日に一度のペースで店に来るようになり。
最初は黒田の連れてきた客だから、と構えてたけど・・・これだけ頻繁に会うようになると、話すことの内容も世間話が中心になってくるし、歳も同じ位だし、なんだか最近では親しい友達のような感覚だ。
店の女の子達の間でもヒカルさんのことは噂になってきた。
でも大概、
「ヒカリちゃん羨ましいですー。あんな若くてカッコイイお客さんがしょっちゅう来てくれて」
「でもヒカルさんってオーナーの知り合いだよ?接客気を付けた方がいいよ」
「げっそうなんですか・・・」
黒田の知り合いだと話すと、女の子達の声色は途端にトーンダウンする。
どこまで店の女の子達が黒田の悪業を知っているのかは謎だけど、あまり良くない男だということは浸透しているのだ。
私は黒田とは付き合いも長いし、彼が裏でしていることも割と把握している・・・と思う。黒田率いる集団(“黒田ファミリー”とか“ファミリー”と彼らは呼んでいる)の幹部達の顔と名前も分かる。
おそらくヒカルさんも、ファミリーの新顔で黒田のお気に入りって所なんだろうけど・・・
二人で話してると全く悪人臭い感じはしない。むしろ優しくて紳士的で・・・正直、立場を忘れてもっとお近付きになりたいくらい・・・
もうこんな仕事辞めたい、とは思っているけれど、彼が来てくれている間の時間はまた別だった。
そして今夜もヒカルさんはやって来た。
私の客は勿論ヒカルさんだけではないので・・・別の客の相手をしている間は、ヒカルさんの席には別の女の子がつくのだけれど。
今日はやたらと客が被りに被り、別の女の子数人が彼を接客した後、ようやく私もヒカルさんの隣に座ることができた。
「こんばんは!ヒカルさん!やっと来れたー・・・遅くなってごめんなさい」
「いいよ。ヒカリさんは人気者だから仕方ない」
「今日はたまたま・・・」
「そうか?いつも他のお客さんがいるだろ?君を独り占めできた試しがない。できたのは初めて会った時くらいか。俺も黒田さん位すごかったら・・・ヒカリさんを好きにできるのかな・・・」
「そんな風に思ってたんですか・・・?」
思わずドキッとしてしまった。こんなの、他の客に何度も言われてきたセリフなのに。