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Cherry-pick【名探偵コナンR18短編集】

第8章 光の交わるところ【諸伏景光】


すると黒田が唐突にこんなことを言ってきた。


「おい、ヒカリ、お前の客は今何人来ている」

「今あとお一人です・・・」

「帰してこい、今日はもう誰も呼ぶな」

「えっ・・・はい」

「客を帰したらここへ戻れ」

「・・・分かりました。失礼します」


黒田は私をここの席に縛り付けて何がしたいのだ。「辞めたい」って言ったことへの腹いせなのか・・・

まあ逆らうこともできない為、客を適当に帰し、再びVIPルームへ戻る。

でもそこにはもう黒田の姿はなく。

一人残されていたヒカルという男性に聞けば、「黒田さんは先に帰った」と言う。意味が分からない。

しかし私に「ここへ戻れ」と黒田は言ってたんだから、つまりそれはこの男性をもてなせ、ということなんだろう。




「ヒカリさんは、もう黒田さんの店に勤めて長いのか?」

「長い、のかな。十代の頃にお世話になってからずっとです」

「歳はいくつだ?」

「えっと・・・」


ビックリした。さっきまで無愛想だった彼が、次々と質問をこちらにぶつけてきた。
出身地、兄弟の有無、昔好きだったマンガの話・・・こちらが聞き返す暇もないくらい、質問と応答だけが続く。

小さい頃の話に質問が及んでくると、当時の思い出が頭を巡り、最初もふと思ったけど、ヒカルという人が、だんだんヒロくんに見えてくる。

それに・・・さっきは黒田が居たから萎縮してただけなのか・・・彼の雰囲気がいくらか柔らかくなってきて。益々目の前の人がヒロくんに思えて仕方ない。

やっと質問が途切れたタイミングで、思い切って切り出してみる。


「でもヒカルさんって、実はね、私の子供の頃よく遊んでた男の子にそっくりなの!」

「・・・かもしれないな」

「っえ?もしかしてヒカルさんってその子のお兄さんだったり・・・しませんよね」

「いや・・・俺今何て言った?・・・忘れてくれ」


なんかしっくりこないけど・・・

でもその後は不思議なくらい会話が弾んで、店が閉店する頃にはすっかりヒカルさんと私は打ち解けた。

黒田の部下ならあまり明るい商売の人じゃないんだろうけど・・・まあ、それはお互い様か。嫌なことを全て忘れていられる位、楽しい時間だった。

帰り際「また飲みに来るよ」と言う彼と電話番号を交換して、店の前で別れた。
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