Cherry-pick【名探偵コナンR18短編集】
第8章 光の交わるところ【諸伏景光】
黒田がどうやらかなり悪い集団の人間だと気付いてからも、昔拾ってくれた恩があるからとこれまで慕ってきた。
でもそんな気持ちはもう無くなってしまった。
だからといって店を辞める勇気も出ず・・・辞めたら本当に何をされるか分かったもんじゃないからだ。
悩みながらも働き続けていた、ある日の夜。
開店から三時間程経った頃、その黒田が客を連れて店にやって来たのが視界の端で確認できた。黒田は一人の男性と共に奥のVIPルームへ入っていく。
こういうことはたまにある。奴は半グレ集団の幹部だったり、気に入ったメンバーを店に連れてきたりする事があるのだ。
新人の女の子達では彼らを怖がって接客もままならないので、経験の長い者が相手をさせられることが多い。
いつも通りなら、大概私もその席に呼ばれるんだけど。
この間黒田とモメたばかりだし、今日は無いだろう。
ところが自分の客をもてなすこと数分・・・ボーイに呼ばれる。
「ヒカリさん・・・VIPルームお願いします、オーナーがいらしてます」
「わたし!?・・・誰と来てるの」
「初めて見る若い方です。オーナーはどうしてもヒカリさんを席に付けたいみたいでしたよ」
先日怒鳴ったばかりの私を呼びつけるとは、何かの嫌がらせだろうか・・・
引き攣りそうな笑顔を貼り付けて黒田の元へ向かう。
「こんばんは、オーナー。失礼します」
「おっ!来たな。こいつに会わせてやりたくてな」
隣には私と同じくらいの年代の男性。
「・・・初めまして、ですよね。光(ヒカリ)です。お隣よろしいですか?」
「ああ・・・」
「こいつ、光(ヒカル)って奴でな。口数は少ねぇが中々デキる奴だ。これは光(ヒカリ)、この店の稼ぎ頭だ。同じ名前のよしみ、歳も一緒くらいじゃねぇのか?仲良くしてやってくれ」
「ヒカルさん・・・へえ・・・よろしくお願いしますね」
「ああ」
そのヒカルという客は、あまり私と目を合わせずにボソボソ喋る。でも綺麗な顔をしてると思う。
というより・・・なんとなくあのヒロくんに似てる。でも他人の空似だろう。あの正義感の強いヒロくんが、黒田なんかとツルむ訳がない。名前も違うし。(名前が違うのは私もだけど)
しばらく当たり障りのない会話をしながら、この無愛想な彼にはどんな話題がウケるのか考えていた。