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Cherry-pick【名探偵コナンR18短編集】

第8章 光の交わるところ【諸伏景光】


中学生になっても、よく三人で遊び、笑い、私達は仲が良かったと思う。

でも、私と彼らの間には決定的な“差”があった。性別の話ではない。

彼らは勉強もスポーツも、人より飛び抜けてできた。対して私は勉強はまるでダメ、秀でた特技もない。

昔は何でも卒なくこなす彼らを羨んではいたものの、そんなに気にはしてなかった。

でもこの差があるからこそ、私と彼らは“ずっと一緒”とはいかなくなる。


卒業後の進路だけど、彼らは当然のように進学校へ進むことが決まった。
けど私は、お金もなければ奨学金や学費の免除に値する程の学力も持ち合わせていない。近所の工場へ就職することになった。

そうなると、会う頻度は激減していく訳で。


就職して一年経ち、ついに彼らとは顔を合わせることが無くなった。

加えて、私は最初こそ仕事を頑張りはしたものの、同世代の同僚が一人もいない職場で一日を終えることに、だんだん嫌気が差してきてしまっていた。

しかしその当時住んでいたのは会社の寮。働き続けなければ、住む所もなくなってしまう。施設には戻れないし、貯金もそんなに無かった。

どうしたもんか・・・と仕事終わりに一人俯きながらとぼとぼ道を歩いていた時だった。

ある男に声を掛けられ、それが私の人生を大きく変えていくことになる。


その男の名は黒田という。今でこそ分かったことだけど、所謂半グレ集団のボスのような奴で。
都内で飲食店から飲み屋に風俗まで、何件もの店舗経営をしている、ある意味実力者。

私は黒田に拾われ、住む家を用意してもらう代わりに彼の店でホステスとして働くことになり、気付けばあっという間に数年が経ち、今に至る。

ずっと欲しかったお金が沢山手に入り、好きなものを買い、お洒落もして。客にはチヤホヤされ、同世代の仲間もできた。最初こそ、それは夢のようだった。


でも最近、自分はいつまでこの世界に居るんだろう、と漠然と考えるようになって。

どこかの歌手の言葉じゃないけど、“普通の女の子”になりたいのだ。


でも「仕事を辞めたい」と、黒田に話した所、返ってきた言葉は酷く冷たいものだった。

「今まで俺のおかげでどれだけいい思いをしてきたと思ってるんだ」
「勝手に辞めたら許さない」
「俺が誰だか分かってるよな?逃げても必ず探し出すぞ」

黒田にとって私は、店に金を運ぶ只の駒なのだ。
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