Cherry-pick【名探偵コナンR18短編集】
第8章 光の交わるところ【諸伏景光】
物心つく前から私には両親はいなかった。他に身寄りもなく、養護施設で育った。
周りの皆の当たり前が、私にとっては違う。
小学生の頃。望んでこういう境遇になった訳でもないのに、親がいない、施設で暮らしてる、って理由で同級生に理不尽な事を言われたり、いじめの様な目に遭ったりしてた。
でも、学校で辛い事を言われる度に、助けてくれた男の子がいて。降谷零っていう、金髪の色黒の男の子だ。
零くんは強かった。ヒーローみたいだった。
彼も、明らかに皆と違う容姿をからかわれたり、いじられたりしてたんだけど、いつもそういう事を言う奴らに歯向かってはケンカして・・・
私が何か言われた時もその相手に殴りかかってはケンカになり、ケガをして。
でも、いつも零くんはケンカの後は笑ってた。
絶対ケガした所とか痛いだろうに、「何かされたら絶対言えよ、全員やっつけてやるから」とか何とか、カッコイイ事を言ってた記憶がある。
当時私にも零くんにも友達と呼べる相手はおらず、学校では彼と二人で居ることが多かった。
男と女だからか、それをまた周りにからかわれては、零くんが怒ってケンカになったり・・・
そんなある日、私達の学校に転校生が来た。
「諸伏景光です!長野県から来ました!よろしくお願いします!」
爽やかで明るくて、おまけに綺麗な顔立ちのその転校生は、あっという間に校内の人気者となった。
彼は、あまり周りと馴染んでなかったわたしや零くんにも臆さず話し掛けてくれた。
でもそれを周りはあまり良く思わなかったらしく。
「諸伏、あんな奴らとは関わんない方がいいぜー」から始まり、言わなくてもいいことを次々に彼に吹き込んでいった。
「なんて親もいないし家施設なんだぜ?」と誰かが言った時だった。
「親がいないのはそんなに悪いことなのか?僕だって両親がいない。君達がそう思ってるなら、僕はもう君達とは関わりたくない」
転校生の彼がそう言い放ったのだった。
その時、今までいつも温和そうだった彼の態度は冷たく一変して。周りは何も言えず固まるだけだった・・・
それからだ。私と零くんとヒロくんは、三人一緒に行動することが多くなった。
ヒロくんのおかげで、周りからの風当たりもいくらか弱まった気もした。
零くんもヒーローみたいだったけど、もっとすごいヒーローが現れたのだ。