第4章 俺の親愛なる
「てか俺が用があるのは、そこのチビ子ちゃんだけだし」
すごい失礼な呼び方でしかも指まで指された。
今更何の用だよチャラ川さん。
「チビ子ちゃんって私のことお、クソ川ああ」
「はは、ひまりからクソ川って呼ばれんの新鮮だなー新鮮だけど及川さん傷つくからやめてー岩ちゃんの真似とか一番ダメなやつだよ-」
潔子先輩の背中に隠れて威嚇してみるも彼には何処吹く風。
おいで、と呼ばれて手招きされるが、私は犬か何かか。
さっきまで敵同士だったのに気さくな主将に笑える。
「155って女子の平均くらいだし、別にチビじゃないから」
プンプン怒れば、徹も笑ってごめん、と謝って。
なんだかここだけ、二年前に戻ったかのような錯覚。
「いいからおいで、ひまり」
「もう、しゃあないなあ。手短にね!」
さっきまで敵だったくせにい、と思って足早に徹に駆け寄ろうとすれば、後ろからクイ、と右手を引っ張られて阻止されて。
え、なに。なんですか誰ですか。
「って、え、蛍君」
振り向けば私の手を引っ張って徹の元へと駆け寄る私を妨害する蛍君の姿が。
「な、なになにどしたの蛍君?」
まともに見上げたら首疲れるなあ、実際何㎝くらい身長差があるんだろう、なんてぼんやり考えてしまう。
「え、なんで無視!?手離して蛍くん?」
その後三秒くらい離してくれなかったけど、なんかいきなり頷いて唐突に離された。
なんなのどうしたの。
「いや、腕にゴミついてたから」
「はあ?なにそれ。正気なの?」
待って、さっきまで蛍君のこと怒ってたのを忘れそうになるくらいに蛍君の顔がヤバくて笑う。
捨てられた子犬以下の顔してんだけど。
いや待って、耐えられない。