第4章 俺の親愛なる
「ウチをあんま舐めてっと食い散らかすぞ」
ただでさえ外見が迫力があって、一見ガラの悪そうに見える龍先輩が脅迫気味に睨み付けるのだから、青城のバレー部さんが固まるのも仕方ないよね。
悪口言って楽しそうにしてた二人、普通に固まってるし、怯えてるし。
なんか感じ悪そうな人たちだけど少し可哀想。
「そんな威嚇しちゃダメですよ~田中さ~ん」
およ、蛍君まで加勢するらしい。
うん、蛍君の性格の悪さは天下一品ってことだけはマネとして入部して四日目だけど重々承知してるから、何か口を出すとは思ってたよね。
本領発揮なのかな。
「ほらぁ、エリートの方々がびっくりしちゃって可哀想じゃないですかあ」
なんて言いながらすっごく意地悪そうに笑う。
試合の時はむきりょ…いや、体力温存型なのにこういう時の蛍君ってばイキイキしてるなあ。
とか思ってたら、
「おうそうだな、イジめんのは試合中だけにしてやんねーとな」
と龍先輩。
二人して性格悪そうにニヤニヤしてるから、さすがに青城のエリートさんたちが不憫でならない。
というか、ホント蛍君って良い性格してるよなあ。
どうして部活中に冷めてるくせに、こういう時だけ熱くなるのか。
どう考えても逆じゃないのかな。
日向とか飛雄ちゃんみたいになれないもんかね、少しくらい。
「まあまあまあ」
潔子先輩も止めないし、キャプテンに怒られそうだしここはマネとして何かしら役目を果たしておこう。
「あは、蛍君も龍先輩もおさえて、ね?その辺で勘弁してあげましょ?」
せっかくの他校との練習試合じゃないですか、ほらほら、行きましょ!と言って上手いこと二人の中に割り込んで、軽く腕を引っ張る。
龍先輩は過剰に顔を赤くし(潔子先輩一筋のくせに女子に免疫がないとか)、蛍君は面白くなさそうにそっぽを向いた。
「失礼しました!」
ぺこっとおざなりに一礼して、ささっと踵を返していざ体育館。