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【ハイキュー】11月のアンクレット

第3章 惚れたら負け


「...蛍君」
「なに」
「...どうしてそんなに意地悪なことばっかり言うの」

僕を怒って、と言うよりは心底不思議そうに荻原が首を傾げる。
まるで訳がわからない、とでも言うように。
どうしてって端的に言えば影山が荻原に敵意を剥き出しにしたのが原因だけどそんなこと言えるかよ。

「何か影山君に恨みでもあるの?酷い、そんな言い方」

折角だから、私は仲良くやりたかったのに、と呟いた荻原がもう一度影山に謝り、影山も大丈夫っす、みたいな事を言ってその場が収束したらしいけれど、僕は彼女から受けたダメージが大きくてそれどころではない。
僕って酷くて最低なヤツらしい。
ちょっと立ち直れない。

「蛍君、ちょっとしゃがんでみて」
「は。なんで」
「いいから」

心底なんでだよ、と思いながら彼女の目線に合わせて屈めば、「とりゃっ」とか言いながら頭を叩かれた。

「もうダメだよ、あんまり意地悪言ったら。せっかくだし楽しくやろうよ、ね?」

部活にそんなに熱くならなくてもさ、と彼女が言いながら僕のジャージを脱いで、はい、とかけ直す。
ふわりと彼女の甘い匂いが香って、なんだか一瞬で何もかもどうでもよくなった。
果たして自分は熱くなっていたのだろうか。
彼女がそう言うからには多分そうなんだろう。
元を辿れば荻原が影山にイケメンだとかもてはやしていたところからかなり面白くなかったのだから、僕のせいだけじゃないとは思うけど。

「あ、そうだ。私先輩たちにも自己紹介して来なきゃ」

うっかりしてたあ、とか言って笑って荻原が2,3年の元へと走る。
程よく軽く引きずらない性格なのか、先ほどまでの一連の騒動はまったく気にしてないとでも言うように。
で、コミュ力の高い彼女らしくあっという間に打ち解け、予想通りと言うかチヤホヤされていたので普通に気が気ではなかった。
小さくて取っつきやすいからって仮にも荻原は女子なんだからあんなにベタベタ触らないで欲しいし、荻原も荻原で冗談でもやめてください、とか言えないわけ。
菅原さんがフイに荻原の頭をぐしゃぐしゃにして撫でてるのが視界に入ってきて、僕は気が気じゃなかった。
ハラハラしつつも荻原を横目でチラチラ盗み見る。

「組めた-!練習試合組めたよー!」

なんて誰だかわからないけど先生っぽい声が体育館に響き渡るわけで。
そこでようやく荻原から意識が逸れた。

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