第9章 恋敵
家康と想いが通じ合って、早いもので1ヶ月近くの月日が経った。
天邪鬼なところはあるものの、以前に比べたら明らかに素直になったと思う。
「…素直になったのはお前限定だろ?」
肘を付き、手に顎を乗せて呆れたように言ったのは幸村だった。
今さくらは、恋人の家康…とではなく、幸村と一緒に居る。佐助というオマケ付きで。
家康と付き合いはじめて、初めての甘味お茶会だ。
「でも、あいつよく許したな。俺らと甘味食べるの」
「普通は断るんじゃねぇの?」と割と真剣に言ってきた。
「うん、一対一はダメって言われたよ?でも、佐助がいるんだったら良いよって」
「…俺は家康公に信頼されているのか。……嬉しすぎる!」
「…兄妹だからだと思うけどね」
握りこぶしを作って一人興奮している佐助を、さくらと幸村は哀れむような目で見た。そしてふと幸村の言葉が蘇り、考える。
もし家康が他の女の人と一緒に甘味を食べていたら…、正直嫌だ。
ああ、でも舞と綾とだったら信頼してるから気にしないかもしれない。
「家康さんも誘ったんだけど…、する事があるらしくて断られたの」
「…あっそ。ま、あいつが良いなら良いけど」
そう言って、みたらし団子をパクリと豪快に食べる。
何だかんだで幸ちゃんは男らしいと思う。
もし目の前にいるのが家康だったら……ああ、唐辛子をかけて、真っ赤になったみたらし団子を頬張りそうだ。最早みたらしの甘さなんてありゃしない。
そんなことを想像してると、自然に顔がニヤけていたらしい。
「お前今、あいつのこと想像してただろ」
幸村はニッと笑って悪戯気に呟いた。
「何かやらしー事でも想像してたのか?意外とスケベなんだな、お前」
「なっ、変なことなんて考えてないよ…!」
「ふーん。俺はてっきり顔がニヤけてたから、何かやらしー事でも考えてたのかと思った」
「違うよ、家康だったらみたらし団子に唐辛子かけるんだろうなって思ってただけ!」
「…は?」
「やらしー事考えたのは幸ちゃんの方でしょ。そっちこそ顔ニヤけてるもん」
「いやいや、待て待て。みたらし団子に唐辛子?!」
想像しただけで美味しくなさそうな団子を思い浮かべ、幸村は眉をひそめた。