第7章 再会
家康の名を呼び、無表情でじっと見つめる佐助に、何を言われるのかと家康は眉を顰めた。
「俺、家康さんのファンなんです。是非握手をして下さい」
「…は?ふぁん??」
意味わかんないんだけど、と冷たく言う家康の言葉は届いていないのか、本人の許可なく佐助は家康の手を取り握手した。
「暫くこの手は洗わない」と呟いた言葉はバッチリ皆の耳に聞こえている。その様子を周りの人たちはポカンとした表情で見ていた。
「…ああ、そういえば佐助、有名な武将の中でも家康さんが特に好きだって言ってたっけ」
「ああ。どの武将も好きだけれど、家康さんは特に俺のイチオシだ」
佐助がブツブツと語りながら自分の世界に入ってしまったので、さくらは「ちゃんと手は洗ってね」とだけ言って佐助から離れた。
「なあ、佐助のやつどうしたんだ?」
「頭の病気です。だから気にしないで。ああなった佐助は暫く戻ってこないから、放っておいて大丈夫です」
幸村の質問に笑顔で答えると、さくらは信長の側…ではなく、定位置になっている家康の隣へと戻っていった。
すると、そばにいた舞に話しかけられる。
「まさか佐助くんと双子だったなんて!もう驚いちゃった」
「そうだね、私もまさか佐助がこっちにいるとは思ってなかったから驚いた」
「…俺はあんたが肺の病を患ってるってことに驚きなんだけど」
体調を崩すことは多々あったけれど、まさか肺を患っているとは思いもしなかった。
そんな素振りも見られなかったので、気づかなかったのだ。
「少しでも体調が悪かったらちゃんと言いなよ」
天邪鬼な所もあるけど、本当は誰よりも優しい人。
いつか…いつか家康さんには自分の身体のことや桜の精霊のことを言えたらいいなって思う。
眉を寄せながら、“は?何言ってるのあんた。頭大丈夫?”って言われそうな気もするけれど、それでも彼は信じてくれるだろう。
「今のところ大丈夫です。…心配してくれてありがとう」
彼の優しさが嬉しくて、思わず頰を染めて答えた。
「ダメだ、ダメださくら!例えイチオシの家康さんでも、さくらだけはそう簡単には渡さない!」
「は?」
佐助はさくらの両肩を掴んで、異性と会うときは逐一お兄ちゃんに報告するように!と言ってきた。
…ホントなんでこんな奴と双子なんだろう。