第7章 再会
“私、肺の病気なんだって”
“…そう、か。無理はしないように”
“うん、大丈夫。………をおいて逝ったりしないから”
“縁起でもないこと言わないでくれないか”
“ごめんね。でも………も私の前からいなくならないでね”
私たちは、たった二人だけの家族なんだから……
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どのくらい眠っていたのだろう。辺りを見渡すと、外は明るいようだから、朝か昼なのだろう。
ゆっくり身体を起こすとまだ少し怠さが残っている。
「…懐かしい夢、だったなぁ」
懐かしいと言っても、ここニ、三年前の話だが。いなくならないでねと約束したあの日から一年ちょっとで、私の前からいなくなった。
「…どこにいるの」
ポツリと呟いた言葉は、誰にも届くことなく消えていく。
この時代に来る前に出会った不思議な少年が言っていた。
探し人と必ず会える、と。私が探している人は一人しかいないから、恐らく少年の言う探し人と私の探し人は同一人物なのだと思う。
「いつか必ず会える、か」
本当に会えるのだろうか。私は時代を超えてしまっているのだけれども。そんな事を考えていると、スッと襖が開いた。
「目、覚めてたんだ」
「家康、さん。すみません、迷惑かけてしまって」
「本当に迷惑だったよ」
溜息をつき、容赦ない言葉を吐く。
「…ごめんなさい」
最初こそ慣れなかったけど、今なら分かる。彼は天邪鬼だから、言葉はきついけど、根は優しい。
迷惑だったと言っているが、本当は「迷惑じゃなくて心配した」と言っているのだ。
「あんた、丸二日眠ってた。お腹とか、空いてない?」
流石に驚いた。まさか二日も眠っていたなんて思いもしなかった。
そして「お腹空いてない?」の言葉が合図のように、ぐぅ、とお腹が鳴る。彼にもお腹の音はバッチリ聴こえただろう。…恥ずかしい。
「あんたのお腹、正直だね。消化の良いもの持ってきてもらうから、ちょっと待ってて」
体調を確認してから、部屋を出ようと襖を開ける。そして、ポツリと呟いた。
「…あんたが無事で、良かった」
「…っ!」
顔を上げて家康さんの方を見ると、彼は横目でこちらを見ながらフッと微笑んだ。
その顔は反則だ。かっこよすぎる。
部屋に一人残された私は、顔を真っ赤にして、三角座りした膝に顔を伏せた。