第3章 頑張る君
「信長様、私に仕事をください」
お願いします、と頭を下げるさくら。隣には付き添いできた家康もいる。その姿を面白そうに信長は見た。
「貴様の噂は俺の耳にも届いている。女中の手伝いをしては追い出されてるらしいな」
「…毎日毎日、女中に“姫がするようなことではない”と言われて暇なんだそうです」
「舞といい貴様といい、姫らしくはできんのか」
「出来ないみたいなんで何とかしてください」
話し相手になるこっちの身にもなってほしい、と呟く。
そんな家康を見て信長は愉快そうに言葉を発した。
「そんなことを言ってるが、嫌ではないのだろう」
「…は?」
「貴様のことだ。本当に嫌なら、話し相手にすらならんだろう」
「……っ、そんなこと…」
「フッ、まあよい。さくら、女中たちには言っておく。女中の仕事を手伝いたいならすればいい。それから、針子の仕事も教えてもらえ」
「針子…ですか?」
「舞から聞いている。趣味でよく小物を作っていたそうだと」
嫌じゃなかったら仕事を覚えて手伝ってやれ、針子部屋はいつも忙しそうだからな、と信長は言う。その言葉にさくらは嬉しそうに「ありがとうございます」と言って、家康と一緒に天守を後にした。
「…よかったね、これで暇じゃなくなるよ」
「うん、ありがとう!」
慣れないのもあったからか、前までは表情が硬かったけど最近はよく笑うようになったと思う。
それは信長様も気づいてるし、秀吉さんや政宗さん、光秀さん、あとオマケだけど三成もこの前話していた。
「舞さんに色々と教えてもらおう」
「うん、そうするといいよ。舞は針子の腕だけは確かだから」
「針子の腕だけって…」
「事実だし。…余計なことに首を突っ込むところとかは教えてもらわなくていいから」
そう言うと、どう反応していいのか分からないのだろう。さくらは困ったように笑っている。
「信長様が仕事をくれたのは、あんたが頑張って仕事を見つけようとしてたから、そのご褒美」
女中たちに散々「しなくていい」と言われてもめげずに頑張ってたの、俺は知ってるから…だから少しはあんたのこと、認めてあげる。