第4章 チーム
その気持ちは、私もわかる。
いくら飛べたって、元々の身長差は埋まらないから。
でも、
「あの、次、コイツにトス上げるんで、全力でブロックしてください」
日向くんの武器は、それじゃないでしょ?
「−−今のお前は、ただの『ちょっとジャンプ力があって素早いだけの下手くそ』だ。大黒柱のエースになんかなれねえ」
日向くんが、部活レベルでも、きちんとバレーに触れられるようになったのは烏野に入ってからだ。
雪が丘中では、バレー部でさえない人も寄せ集めての即席チームで試合はたった一回。
個人練習だって、女子バレー部やママさんバレーに混ぜてもらっていただけで、クラブチームの経験もない。
簡単に考えたって、練習不足。根本となる基本的なバレー能力が圧倒的に低い。
その状態で戦うには、日向くんのポテンシャルを最大限生かすしかない。
「でも、俺が居ればお前は最強だ!」
そういう点でいえば、影山くんとの速攻は、今の日向くんにはピッタリ、あっているのだろう。
これからどうなっていくのかはわからないけれど。
「躱せ!!!それ以外にできることあんのかボゲエ!!」
今の日向くんは、真っ向からブロックとぶつかったら勝ち目はない。
打ち抜けないなら、
「「躱す」」
うん、ナイスキー。
「お前はエースじゃないけど!!そのスピードと、バネと、俺のトスがあれば、どんなブロックとだって勝負できる!!!
エースが打ち抜いた1点も、お前が躱して決めた1点も、同じ1点だ。
”エース”って冠がついてなくても、お前は誰よりも沢山の得点を叩き出して!だからこそ、敵はお前をマークして!他のスパイカーは、お前の囮のお陰で自由になる!エースもだ!!」
日向くんの速攻は、今のところ、囮としては一級品だからね。
「それでもお前は、今の自分の役割がカッコ悪いと思うのか!!!」
影山くん、すごくゼーゼーしてる。
「……………思わない」
「あ?」
「思わない!!!」
「よし!!!」
日向くんがいつも通りに戻ったところで、試合の続き
「「お願いします!!」」
セットカウント2−0
町内会チームの勝利で試合終了。
お疲れ様でした。
「烏野ファイッ」
「「「「オース!!!」
次は合宿。
化け猫先生、元気かなぁ?