【刀剣乱舞】百振一首 ─刀剣たちの恋の歌ー(短編集)
第10章 ーあらざらむー 大倶利伽羅
残りの敵を殲滅した後に、近くにいた山姥切と鶴丸が駆け寄ってくる。
もう俺は座ることすらできなくなり、その場に倒れた。
「おいバカ、死ぬなよ!」
鶴丸。
「そんな驚きはいらねえから、なあ!」
すまん、鶴丸。
俺はゆっくり山姥切の方を向く。
「主は……、お前が、居れば……」
「何を言う、大倶利伽羅!主の気も知らずに!俺なんかかばって、あいつがどんだけ悲しむと思ってんだ!毎日どんな顔してお前のことを喋ってるのか!あいつがどんだけ、お前をっ……!」
……愛していたか、知っているのか。
叫ぶように伝えられた、主の思い。
「……主が、俺を……?」
人から聞いたからか、どうにも信じられない。
混濁した意識の中、必死に主のことを思い浮かべる。
苦しい、痛い。
主、俺のそばに、居てくれ……。
「馬鹿野郎、このっ、大馬鹿野郎!」
もう二度と、会えないのだろう。
「……俺も、愛していた……」
せめて最期に、この現世に呼ばれた思い出に。
もう一度だけお前に会いたかった。
あらざらむ この世のほかの 思ひ出に
今ひとたびの 会ふこともがな